プロジェクトの背景

独自のビジネスモデルを展開し、新たな挑戦と価値を創造し続ける革新性を持つオリックス銀行株式会社。しかし、新卒採用において、銀行ということから堅いイメージを持たれてしまう傾向がありました。また、メガバンクや地方銀行、ネット専業銀行など他の銀行とは異なる事業の独自性から、その事業や業務内容が正しく理解されないという課題意識がありました。

そこで、学生から見た企業ブランドイメージを把握するべく、当社の採用ブランディング効果測定サービス「ビズミルサーベイ」を利用して学生への調査を実施。調査により同社の強み・弱みを可視化したうえで、ターゲットとなる学生の定義付けからコミュニケーションツールの設計までをご提案し、新卒採用ブランディングに伴走させていただくことになりました。

さらに、そういった新卒採用支援のご縁から、キャリア採用についてもご相談をいただけるようになりました。キャリア採用においては、自社の採用サイトがないことにより、企業として直接応募を受けるルートがなく、また求職者に対して「不動産投資×インターネットを活用した銀行」という独自のビジネスモデルや業務内容について正しく訴求する機会がないという課題がありました。これらの課題解決に加えて、業務のやりがいをしっかり伝え、求職者に業務イメージを深めてもらいたいという思いがありました。

そこで、キャリア採用においても、事業や業務内容の正しい理解を促し、同社の魅力を訴求するための採用活動の支援がスタートしました。

プランニング

新卒採用では、定量調査をもとに採用ブランディングを強化。2年間で、課題分析からターゲット設計、採用サイトリニューアル、インターンシップサイト新設、採用映像制作に着手しました。

【1年目】

まずは、ビズミルサーベイによる学生への定量調査をもとに、情報発信の土台となる採用サイトのリニューアルに取り組みました。

調査の結果、働き方や人・社風の魅力は強みとして伝わっているものの、自社独自の提供価値や業務内容への理解が不足していることが明らかになりました。同社の社員が感じている魅力が伝わっていない可能性が高いため、訴求したい業務内容の魅力を言語化し、発信していく必要性を認識しました。

あわせて、採用ターゲットの定義付けを実施。定義したターゲット学生に刺さる同社の魅力を抽出し、学生の行動・思考にあわせたサイトコンテンツを設計。コンテンツ設計をするうえでもビズミルサーベイを活用し、ターゲット学生ごとに訴求すべき魅力を議論しました。

そして、採用サイトのコンセプトを「銀行業界やオリックスグループの中で専門に特化した機能会社ではなく、未来の社会活動を支え、原動力となっている存在がオリックス銀行である。」とし、サイトの役割を「オリックス銀行の存在意義と業務の専門性を伝えること」と整理。「オリックス銀行は就職活動を進めるうえで選択肢に残しておきたい」と感じさせる採用サイトを目指しました。

【2年目】

2年目は、インターンシップサイトと採用アニメーション映像を制作。

同社では実務体験型ワークショップ形式のインターンシップを実施しており、新卒採用マイページ登録のメリットが伝わり、インターンシップに参加したいと感じさせるサイトを目指しました。1年目で制作した新卒採用サイトの柔らかい印象は崩さず、その中で最大限インパクトを与えられるよう設計しています。

採用アニメーション映像は、“事業理解の一歩目”となるような映像を目指しました。映像をきっかけに、潜在層・顕在層の学生が事業内容の理解を深め、選考前・選考中の学生の興味喚起と志望度醸成、選考・内定辞退の軽減を狙いとしています。同時に、事業内容を根拠に「銀行らしくない銀行」であることを訴求し、「堅いイメージ」の払拭を目指しました。ここでも事業内容に焦点を当てたことで、映像全体を通して端的、かつ納得感のある構成としました。

その後も、ビズミルサーベイによる学生への調査を定期的に行い、毎月1回の定例会議にて、定量データをもとに採用課題の特定と改善策の提案を行っています。

アウトプット

【新卒採用サイト】

業務内容の理解を促進するため、コンテンツは企業情報、業務内容、社員インタビューといったオーソドックスな内容に。シンプルな構成である分、写真の美しさや動きの面白さを強調しています。

TOPページには、左に社員、右に増やしていく「幸せ」の姿を表したキービジュアルを配置。仕事に対する真面目さとオリックスグループという土台の強さ、そして心から幸せを願う優しさを表現しています。また、リニューアルしたきれいなオフィスも訴求ポイントのひとつとするため、各ページのファーストビューではオフィスにいる社員を大きくレイアウトし、社員紹介では空間を活かした撮影素材を大きく見せるつくりとしました。

【採用アニメーション映像】

インフォグラフィックスアニメーションを用いて数字や割合、関係性の図式表現などを活かし、「事業内容」と「銀行らしくない銀行である根拠」を端的に表現。映像の冒頭では銀行という固定的なイメージを持つ学生に対し、「銀行なのに?」と新たな気づきを得られるような情報を数字で示し、最後まで興味を持って視聴してもらえるような起承転結の構成となるよう工夫しました。

【キャリア採用サイト】

第二の柱を創出する変革期を迎えていたタイミングであったことから、「新しいことに自分からチャレンジできる人材」を採用ターゲットに設定。チャレンジ精神がある人材にアプローチするために、ベンチャー企業のような印象が残る採用サイトを目指しました。

キャリア採用サイトということもあり、TOPページ・エンジニア用・営業用の3ページといったコンパクトながらも、ターゲットに伝わりやすいサイト導線に設計。共通して伝えたい情報はTOPページのピッチ資料にまとめ、サイトに埋め込んでスライド形式で見せています。

TOPページのキービジュアルは「変革の真ん中。ここから、広がる。」のキャッチコピーの通り、社員を中心に線が伸びたり、パーティクルが飛んだりするアニメーションを実装。サイト全体もキャリアが広がる将来のイメージを表現し、インパクトのある回転するモチーフとのバランスを考え、優しいグラデーションを背景色にしています。また、画面を横断するグラデーションのついた線をスクロールの量に応じて伸ばすことで、世界観の統一を図りました。

効果

【新卒採用】

インターシップサイトを公開した2025年卒向け夏インターンシップのエントリー数は、前年と比べて1.5倍、冬インターンシップも1.3倍に増加しています。また、採用アニメーション映像は、業務内容や同社の魅力に対する学生の理解を深め、よりスムーズな採用活動につながりました。

【キャリア採用】

キャリア採用サイトの公開により、前年同期間との比較において、応募数は約1.3倍に増加、内定辞退率は半減しました。加えて、公開後半年で採用サイトからの直接応募数は40件を超えています。