プロジェクトの背景

世界規模で進行するCASEやMaaS(Mobility as a Service)の潮流をはじめ、自動車業界は大変革期の真っただ中にあります。このような中、同社が10年後、20年後、さらにその先も持続的成長を果たすには、これまで積み上げてきたビジネスモデルや人財、ノウハウなどをさらに一段上のステージへと“進化”させることが必要だと感じていました。

そうした課題を背景に、従業員が未来を見据えて同じベクトルで取り組むには、共通の価値観として企業理念を刷新する必要があると考え、社内の業務横断チームが従業員アンケートなどを基に企業理念と8つの大切にする価値観を策定しました。

さらに、同社では理念・価値観浸透プロジェクトを立ち上げ、新たな企業理念と8つの大切にする価値観をグループ会社全体に認知・浸透させ、行動に移すための方策を検討していくこととなりました。当社は本プロジェクトにおけるワークショップのアドバイザリーと運用を支援し、その後の浸透活動にも伴走しています。

プランニング

理念・価値観浸透プロジェクトは、下記のプロセスで実施しました。

・コミュニケーション戦略・施策の立案
・ワークショップアドバイザリー
・ポスター制作

ワークショップの実施後、アンケート調査を実施し、効果検証も行っています。

【コミュニケーション戦略・施策の立案】

具体的な理念・価値観の浸透施策を実施する前段階として、3ヶ月間、隔週で定例ミーティングを実施しました。ここでは、目指す理想の状態と現状の課題、浸透施策を実施するターゲットの設定、それを踏まえたコミュニケーションプランの設計や効果測定方法の検討を行いました。

その目的は、現状と理想のギャップ、浸透施策の対象となるターゲットを明確にして浸透活動の全体感を確かめることで「まず、今取り組むべきこと」を明らかにし、浸透プロジェクトのメンバー全体への共通認識を固めることでした。

【ワークショップアドバイザリー】

コミュニケーション戦略・施策の立案にて、まずはマネジメント層に向けて浸透活動をスタートしました。

最初に実施したのは、「理念を刷新した理由・背景」と「理念の必要性」を伝えることを目的とした幹部層へのワークショップです。ワークショップは下記4つのプログラムから構成し、各プログラムで個人・グループワークを通して企業理念や価値観の理解、業務内で価値観を体現するためのアクションプランの設定などを行いました。

プログラム1自社の企業理念と価値観を再確認する
プログラム2なぜ、企業理念と価値観が必要なのか
プログラム3価値観が行動に与える影響を知る
プログラム4価値観と業務を接続し、体現プランを立てる

幹部層へのワークショップ実施後は、店長、サービス工場長を含むグループ各社のすべての管理職層に対して同じ内容のワークショップを実施しました。さらに、その後は企業理念への理解度が高く、自発的に行動できる従業員を増やすことを目的に、中間層にも応募制でワークショップへの参加を募り、実施しました。

【ポスター制作】

企業理念を認知・浸透させていくための施策として、各社の店舗や事業所内に掲示するポスターを制作しました。ポスターは現在、認知段階にあわせて「第二弾」まで制作しています。

第一弾では、新しい企業理念と大切にする価値観に基づいた活動が今まさにスタートしたことを表現するため、車のスタータースイッチをモチーフにして認知向上を図りました。店舗や事業所内の目立つ場所に掲示することで、すべての従業員に新たな企業理念を周知し、日々意識してもらうことを狙いとしました。

第一弾の展開から一年後には、ポスターのビジュアルを一新した第二弾を制作しました。第二弾では「グループ全従業員で作る」をコンセプトに、従業員が撮影した写真を公募し、ポスターに反映しました。

効果

【ワークショップ】

第1回ワークショップの実施後に実施した振り返りアンケートでは、大切にする価値観に基づくアクションプランを97%が実行でき、組織内でもポジティブな反応があったとの回答が得られました。また、ワークショップの内容についても満足度が高く、企業理念や価値観の制定背景についても理解できたという声が寄せられました。

さらに、ワークショップの実施により、幹部層からの働きかけが重要であること、そして今後は浸透度合いによって内容を改善しつつ、継続的かつ高頻度でアクションプランを考える機会を設けることの重要性を改めて認識するきっかけとなりました。

【ポスター制作】

第二弾のポスター制作で実施した写真の公募は、従業員がポスター制作に参加している当事者意識を醸成するとともに、従業員を巻き込む理念浸透施策として効果を発揮。さらに、ポスターに掲載されている従業員の写真が社内のコミュニケーションを増やすきっかけにもなりました。