伊藤忠丸紅鉄鋼 揚羽 支援実績

写真左から:
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 経営戦略・人総本部 人事総務部 人事企画チーム長 (兼)人材開発チーム長 山林 泰規さま
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 経営企画部 サステナビリティ推進チーム 齋藤 未央さま
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 経営企画部長代行 兼 市場総括チーム長 木村 信一さま
株式会社揚羽 ブランドマーケティング第1部 ブランドマーケティング4グループ 赤池 知優
株式会社揚羽 ブランドコンサルティング部 ブランドコンサルティンググループ 佐藤 考良
※2024年1月取材当時

【ご依頼前の背景】

  • 創立20周年を迎えるにあたり、明確な長期ビジョンが必要となる。社員と共に理念体系を再構築し、使命や強みの再確認と、目指すべき姿を明確にしたい。
  • 社外のステークホルダーには伊藤忠商事と丸紅が出資した鉄鋼部門の関連会社としての認識に留まっており、伊藤忠丸紅鉄鋼としてのアイデンティティを確立したい。

プロジェクトの背景・ご支援のきっかけ

― 今回の理念策定プロジェクトはどのように始まったのでしょうか?

山林さま
2020年4月に就任した社長が、1年後に設立20周年を迎えるにあたり、明確な長期ビジョンが必要だと考えられたことがスタートでした。節目を迎えるにあたり、改めてMISIのアイデンティティや使命、強みを見つめなおし、未来に向けてありたい組織と事業の姿を整理するために「MISIとは?を考えるプロジェクト」が始まりました。
揚羽さんには、以前より会社案内パンフレットコーポレートサイトの制作をご支援いただいており、理念施策にも実績があると伺いお声がけさせていただいたと聞いています。

佐藤
そうですね。まだ山林さまがプロジェクトにジョインされる前に、当時のプロジェクトリーダーの方からお話を伺い、理念策定~浸透のプロセスを提案させていただきました。

山林さま
その後、タスクフォースが組まれ、2020年6月に「MISIとは?を考えるプロジェクト」のキックオフミーティングが開催されました。
タスクフォースメンバーは各本部からそれぞれ推薦された7名、さらに事務局として3名の計10名で構成され、出身会社や年代、性別など、多様なメンバーで構成されていました。私はキャリア入社社員として選出されたと認識しています。

伊藤忠丸紅鉄鋼 理念 策定

理念策定の流れ

― 理念策定まで具体的にどのようなプロセスで進んでいったのか、改めてお聞かせください。

佐藤
3つのフェーズに分けて進行していきました。
最初のフェーズは「会社の現状分析と競争力の源泉を再確認」すること。プロジェクトの目的とゴールを確認して、MISIの強みを知るプロセスです。
2つ目のフェーズは「未来を見通し、ありたい姿の要素を摘出」すること。会社の将来予想シナリオを検討し、その中からありたい姿の要素を洗い出します。
最後の3つ目のフェーズとしてブランドスローガンやビジョン・ミッション・バリューといった新たな理念体系をまとめる「ブランドプラットフォームの定義」です。今までの要素をもとに理念を象徴する言葉づくりを行います。

理念策定 流れ

― 最初のフェーズでは、具体的にどのようなことを行ったのでしょうか?

佐藤
「現状分析と競争力の源泉を再確認」で行ったプロセスは大きく2つ。ひとつは、お取引先なども含む社内外のキーパーソンへのインタビューによる、MISIらしさ、強みの抽出。もうひとつは社内に向けて「自分たちの伝説的な仕事やメモリアルワーク」に関する社内アンケートを行い、社員の皆さまがどのようなことを考えているかを集計しました。
当時、プロジェクトにまだ参加していなかった木村さまや斉藤さまにもアンケートの通知は来たかと思いますが、当時のことを覚えていらっしゃいますか?

齋藤さま
伝説の仕事のアンケートについては、よく覚えています。
いろいろ考えた結果、実現しなかった新ビジネスモデルを形成する提案について書きました。従来の鉄鋼流通というトレードビジネスから一歩抜けた形でサービスを構築するという発想や、今までの経験を活かしてお客さまと一緒に何かを創り上げようとする部分にMISIらしさを感じられた案件だったからです。

伊藤忠丸紅鉄鋼 インタビュー

山林さま
私はタスクフォースメンバーとして意見の抽出に立ち会いました。
社内アンケートの回答率が非常に高かったのが印象的でした。そして各設問に対して大変な文量の回答が返ってきて、集めたアンケート回答を印刷した時、書類の束が非常に厚くなってしまったのを覚えています。
改めて社員の前向きな姿勢に驚かされました。熱い想いを持った社員が多い会社だなと。

佐藤
こうして最初のフェーズでは社内外のキーパーソンへのインタビューと社内アンケートで集まった意見から「MISIらしさ」や「強み」のキーワードを抽出しました。
キーワードには、『自由闊達』『粘り強く困難を乗り越える』『グローバル』『迅速な対応力』というようなものが多くありましたね。

山林さま
タスクフォースメンバーの意見と大筋は変わらず、強みを再確認できた、ポジティブに腹落ちできた、という感覚でした。
他には、設立当初は厳しい環境のなかで出発した会社だったのでパイオニア精神、ハングリー、逆境といった価値観が強く、それもよかったですが、この先の20年はそういう時代を知らない社員も増えるので、もう少しポジティブに捉えていきたいという声があったことも覚えています。

佐藤
今改めて振り返ってみると、プロジェクトが始まって2カ月程でしたが、策定した理念体系のエッセンスがかなり出ていますね。

― それでは次のフェーズについてお伺いします。具体的にどのようなプロセスだったのでしょうか?

佐藤
前のフェーズで現状認識をした後、「未来を見通し、ありたい姿の要素を摘出」していきました。会社の将来予想シナリオをプロジェクトメンバーで議論し、「今後目指すべき、ありたい姿」を検討しました。

揚羽 インナーブランディング 支援

山林さま
具体的には2つのグループに分かれ、業界や社会に関する未来を予測し「将来、自分たちが働く環境はどのように変化しているのか」を議論しました。 そして、予測した未来に対して自分たちが出来ることなど、ワークシートを使用してそれぞれ整理していったのです。
定期的にグループごとにまとめた内容を共有し合い、議論を深めていきました。

佐藤
ワークシートでは次の4つの軸で意見をまとめていきました。①2040年の社会がどのようになっているか、②その時の使命・提供する価値、③強み、④ありたい姿といった項目です。
本来は一堂に会して未来年表を見ながらワークショップ形式で議論することが多いですが、コロナ禍だったのでオンラインで実施できるようにグループに分かれて進めていきましたね。

山林さま
毎週金曜日の午後に議論していたので、在宅勤務中で曜日の感覚がない中この会議を迎えると、ああ金曜日だなと思っていました(笑)。1年近く経ったプロジェクト終盤、緊急事態宣言が明けたタイミングでやっとメンバーの皆さんと直接お会いできた時には、ものすごく一体感を感じましたね。
議論を経て本当にいろいろな意見が出ましたが、揚羽さんにご協力いただきながら未来に向けての新たな強みの大枠をまとめていきました。そして、最終的には「新しい需要を掴んでいくこと、そのための付加価値創出 」という意見にまとまりました。


佐藤
このようにして、使命や提供価値など、議論を経てまとめあげていったのがフェーズ2でした。これらをもとに、理念体系を整理していこうというのがフェーズ3となります。

― いよいよ、新たな理念体系の言葉づくりと理念体系の整理という最終フェーズ。どのように進められたのでしょうか?

山林さま
実は、フェーズ2の最終段階で要素を抽出した際、言葉づくりの方向性が9割見えてきていました。 しかし、タスクフォースメンバーの1人が「本当にこれで良いのか?」という疑問を提起してくれました。
非常に重要なポイントだったので、一度戻って議論をやり直しました。改めて時間をとり、徹底的に議論したことはとても印象に残っています。

伊藤忠丸紅鉄鋼 理念策定 プロセス

佐藤
そうですね、改めてタスクフォースメンバーだけでなく他の意見も聞いてみようと考え、希望制の社員による座談会を開催しました。
この座談会に齋藤さまが参加されたのですよね?

齋藤さま
はい、もともとブランディングにも興味があったので座談会に参加しました。
参加者は1回につき10〜15人程で、部署や年次もさまざまで、現在の会社に対する問題意識や改善策、将来の展望について立場も関係なく意見交換が行われました。座談会には若手社員、そして、確か現在の社長もアメリカからオンラインで参加していましたね。

佐藤
座談会を踏まえて、改めて方向性を確認し、言語化を再スタートさせました。
いよいよ言葉づくりに入るのですが、まずは理念体系の構造から検討。バリューの考え方は2つあり、提供価値の場合と価値観を示すことがありますが、MISIさまでは提供価値に決定。価値観に相当するものは「スピリッツ」として考えることにしました。
そこから、一度、MISIさまがどのような背景で誕生して今にいたっているのかというのをストーリー文にしたのですよね。MISIの「ありたい姿」という文章を作成しました。MISIがこれまでに何をしてきたのか、そしてどうなりたいのか、最近入社した人に知ってほしいことなどをまとめたものです。

山林さま
策定当時、「ありたい姿」は文字が多すぎるという意見が出て、覚えやすく短くする方が良いのではないかという議論もありました。一方で、短くすることで伝わりきらないという懸念もあり、言葉一つひとつについてメンバーで徹底的に議論しました。単語にもこだわって作成しました。
その後のスピリッツの検討なども、この要素でいいのか…などかなり議論しましたね。

伊藤忠丸紅鉄鋼 ありたい姿

新たな経営理念

佐藤
その後、ビジョン、ミッション、バリュー、そして行動指針となるスピリッツ『MISI FRONTIER SPIRITS』が決定します。
また、最後に全体を象徴するブランドスローガン(Our Statement)も策定しました。一言に集約されたブランドスローガンがあると、皆の気持ちが統一されるものです。

山林さま
ブランドスローガンについては、タスクフォースメンバー内で最終的に5つの候補を作成し、社内アンケートを実施しました。
5つに絞った候補のなかでも、「鉄と未来をつなぐ」「スティール フロンティアへ」などとても良い案が揃ったのを覚えています。その中から、タスクフォースメンバーでの多数決と、社内アンケート結果から「鉄を商う。未来を担う。」に決めることができました。
理念体系がすべて決定したのが3月でしたね。

伊藤忠丸紅鉄鋼 理念体系
伊藤忠丸紅鉄鋼 スピリッツ

― 遂に理念体系が決定しましたが、当時どのようなお気持ちでしたか?

山林さま

徹底的に議論して作り上げたものでしたし、完成したときはとても感慨深かったのを覚えています。出来上がった理念体系そのものも非常に満足のいくものとなりましたし、揚羽さまを含め一年間議論を続けた検討メンバーとは、強い一体感が生まれたことも有益でした。通常業務もあったので大変でしたが、タスクフォースに参加して本当に良かったなと思いました。
また、当時タスクフォースをまとめていた事務局の代表は『取締役会で説明をしたときに、決着して、最終決定となった際には涙腺がゆるんだ。コロナ禍でオンライン会議と対面会議のハイブリットという特殊かつ難易度の高い環境下で、ほぼ1年間で完成させることができた。支援いただいた揚羽の皆さんには感謝しかない。多くの人の納得感を得て決定していくという作業が合議制の中で重要なことなのだと感じた。自分の仕事に活かしていきたいと思う。』と言っていたのが印象的でした。

同社の理念策定のフェーズについて、当時を振り返りながらお話いただきました。
後編では「理念の浸透」フェーズとして、ポスターをはじめとする浸透プロジェクトのプロセスをご紹介します。

弊社は、ブランド共創パートナーとして、プランニングからアウトプットまで一気通貫で伴走いたします。
ぜひお気軽にご相談ください。