揚羽 ベルシステム24 対談

写真左から:
株式会社ベルシステム24ホールディングス ブランド戦略室 河合 安子さま
株式会社ベルシステム24ホールディングス ブランド戦略室 室長 山中 洋平さま
株式会社ベルシステム24ホールディングス ブランド戦略室 マネージャー 保木 裕子さま
株式会社揚羽 ブランドマーケティング第1部 ブランドマーケティング3グループ 細川 和正
株式会社揚羽 ブランドコンサルティング部 部長 黒田 天兵
※2024年6月取材当時

【ご依頼前の背景】

  • プロジェクトを自走させる中で、インナーブランディングの浸透施策についてのアイデアはあったものの、正しいかどうかの確証を持てなかった。
  • 自社開催のワークショップに客観性のあるコンテンツを取り入れたかった。特に、「なぜ理念が必要なのか」などの根本的な問いについて、外部の視点から語ってもらいたかった。

プロジェクトの背景・ご支援のきっかけ

― 弊社から今回のご支援をさせて頂くまでに、リブランディングプロジェクトが貴社内で進んでいたとお伺いしています。

ベルシステム24ホールディングス 山中さま
はい。リブランディングの発端は、2020年に“中期経営計画2022”を打ち出したことでした。コンタクトセンターに蓄積される音声データを活用したDX推進や、外部のテックカンパニーなどとの提携といった施策を盛り込んでいたのですが、その内容と、当時の名刺やオフィス、さらにロゴなどのビジュアルアイデンティティ(以下、VI)が醸し出す世界観にギャップがある、という問題があったんですよね。

揚羽 黒田
戦略をシフトさせる中で、その中身に対して外見が伴っていなかった、という感じでしょうか。

ベルシステム24ホールディングス 山中さま
そうです。ですので、2021年にコーポレートロゴの刷新やオフィス移転、そして名刺のリデザインなどを早々に決定し、VIの改訂にも着手し始めました。しかし、それだけでは「なんとなく名刺が変わってカッコいいな」程度の認識になっている状態なので、ここでインナーブランディングの必要性を感じたわけです。社員が大事にすべきことの議論を先行させるのが一般的な進め方だと思いますが、当社ではアイコン策定の後に言語化を進めるというアプローチを取りました。

揚羽 黒田
なるほど。

ベルシステム24ホールディングス 山中さま
そこで、2022年から全社横断型のリブランディングプロジェクトをスタートさせました。最初の半年間では全部門のキーパーソンにワークを実施し、自分たちが何を大事にしているのかをざっと洗い出してもらって、残りの半年間で現在のコーポレートボイスである“その声に、どうこたえるか。”の理念体系を整理し、それを表現するVIも作成しました。
2023年からは、現在の“中期経営計画2025”のリリースと同時に、キーパーソンと作ってきたものをブランド戦略として内外に発信し浸透させるべく、私の現部署であるブランド戦略室を立ち上げました。

インタビュー ベルシステム24

揚羽 黒田
我々との出会いも、おそらくその頃でしたね。元々、採用関連の部署の方とお付き合いがあって、そこから山中さんをご紹介頂いて。

ベルシステム24ホールディングス 山中さま
そうでしたね。当時は次のフェーズとして、“その声に、どうこたえるか。”をいかに社員へ浸透させるか、ということを意識していた頃です。しかしインナーブランディングは私も初めてで、アイデアがあっても正しいかどうかの確証を持てなかったですし、そこに知見を持つプロも少ないと感じていました。そんな時に黒田さんの書籍『組織は「言葉」から変わる。』を拝読して、揚羽さんとならこの話ができると思い、相談に乗って頂きました。
その時の弊社のことを理解しようとする姿勢や、仕事をお願いする前の段階で「ここまで考えてくれるのか」と感じるほどのディスカッションの深さには、揚羽さんの力強さを感じましたね。

揚羽 黒田
畏れ入ります。ありがとうございます。

ベルシステム24ホールディングス 山中さま
社員が40,000名近くいる組織構成の中で、まずはどの層の社員に施策を仕掛けるのが最適かを考えた結果、現場を束ねているグループマネージャー(以下、GM)をターゲットに設定しました。GMそれぞれが“その声に、どうこたえるか。”を言語化し、自組織としての指針にできれば、その傘下にいる社員にまで伝えやすいだろうという意図です。
この指針を我々は「マニフェスト」と呼んでいますが、まずはこのマニフェストをGMに考えてもらうワークショップを浸透施策の1歩目として、我々ブランド戦略室主導で実施することにしました。

揚羽 黒田
今回のご支援内容のお話を具体的にし始めたのは、そのあたりからですね。

ベルシステム24ホールディングス 山中さま
はい。ワークショップの内容として、GMが各自で自組織のマニフェストと、メンバーに向けたマニフェストの浸透計画を作る、ということは決めていましたが、そのための根本的なインプットをGMに行いたかったんですよね。黒田さんの書籍にも書かれているように、そもそもなぜ理念が必要なのかとか、そういった話を客観的・理論的に語ってもらえたら、これからマニフェストを作るGMの推進力になると考えていたので、そこを揚羽さんに依頼しました。
同じ話を私が語ってもいいのですが、GMから見れば「本社の人が何か言ってるよ」としらけてしまう可能性もある。そうすると説得力がありませんからね。

ご提案のプロセス

― その流れを経て、ワークショップに使用するための教材として、今回の「24の浸透施策一覧」と「インナーブランディング講義映像」をご提案する運びになったのですね。

ベルシステム24ホールディングス 保木さま
最初は池袋にある弊社のコンタクトセンターまで、足を運んでくださいましたよね。

揚羽 黒田
まずは現場を見たほうがいいと思ったんですよね。貴社内の雰囲気がどんな感じなのか、想像がつかなかったので。
そこで実際にGMの方ともお話させて頂いて、結果的にリアリティを持って課題や状況を理解することができました。

― なるほど。現場にはどんな課題があったのでしょうか。

揚羽 黒田
一番びっくりしたのは、1人のGMが抱えているメンバーの人数ですね。一般的なマネージャーであれば5名程度が普通だと思いますけど、御社の場合は多くて200名くらい抱える場合もあって、ほとんど経営者じゃないかって思いましたね。
きっとマネジメントには苦労されているだろうから、メンバーの皆さんにはこんなふうに伝えてみたらよいのでは…というところまでは想像できました。そこで活用できそうなノウハウを、社名に掛けて24個厳選し、浸透施策一覧として提案させて頂きました。

揚羽 インナーブランディング 支援

ベルシステム24ホールディングス 保木さま
「インナーブランディング講義映像」のほうは、「企業理念の重要性を最初に理解してもらったほうがいい」とアドバイスを頂いて、冒頭で“その声に、どうこたえるか。”について黒田さんから話して頂くパートを入れてくださるなど、浸透施策一覧とも合わせて、とても丁寧な構成に仕上げて頂けたと感じています。
短い制作スケジュールながら、ワークショップの進行プログラムに合わせてうまく組みこめるようにご調整いただきました。

揚羽 黒田
最初はすごく尺が長い案をご提案してしまったんですよね(笑)そこから少し削った記憶があります。

ベルシステム24ホールディングス 保木さま
全体的には、やはり実際の現場を見て実態をよくご理解頂けたというのが、とてもありがたかったですね。ワークショップの参加者からも「当社のことを非常によく分かってくださっているので、安心感・納得感がある」という声が上がっていました。GMがどんな想いで仕事をしていて、現場の社員まで情報を届けるのにどんなハードルがあるのかをしっかり理解してくださった上で、「映像で学ぶ→浸透施策一覧を活かす→施策を作る」という流れを作ってくださったのが非常に良かったと思っています。

■インナーブランディング講義映像

揚羽 インナーブランディング 研修

ワークショップの成果

― ワークショップの成果はいかがでしたか?

ベルシステム24ホールディングス 保木さま
今回はGM各自が自組織のマニフェストを作るという内容でしたが、それを通じて「組織の言葉を作る重要性」を感じてもらいたい、ということも大きな目的として考えていました。
ワークショップ後に取ったアンケートでも、その点については9割が「重要である」と回答してくれたので、我々が伝えたかったポイントはしっかり伝わったのかなと感じています。
今も「言葉を作ったことで浸透しやすくなった」「自組織のブランドイメージがしやすくなった」といった浸透に対するポジティブな声も上がってきていますし、個性豊かな各GMの施策も続々と生まれています。
また、副次的な効果として、今回のような機会そのものが珍しく、GM同士のよい部分を互いに吸収し合える機会になったという意見もたくさんありました。
自組織の価値を言語化することは、ひいては事業部の価値にも繋がることですし、それを話し合える場になったという意味でも有意義だったと感じています。

ベルシステム24 社内浸透 インタビュー

揚羽 黒田
9割…。大きな組織で、ここまでうまくいく例もなかなかないですね。
しかし、今回の御社のご事情を考えると、ワークショップに対して否定的な方もいらっしゃったのではないでしょうか?よくある例として、アウターブランディングの後でインナーブランディングに取り組もうとすると、社内に反対勢力が出てやりづらくなる…ということが多かったりするのですが。

ベルシステム24ホールディングス 山中さま
“その声に、どうこたえるか。”は抽象的な概念なので、反対する人はいなかったんですよね。ただ「身近ではない、遠い存在」という感覚はあったと思います。
だから制定当初は、GMにしてみれば「理解はできたけど、それで自分はどうすればいい?」という気持ちの方が強かったのではと思います。

揚羽 黒田
その状態から今回のワークショップを通じて、GMの皆さんの意識が変わっていく様子をご覧になられてきたと思いますが、どんな瞬間にそういう変化が見られましたか?

ベルシステム24ホールディングス 山中さま
ワークショップを経験したことで、何か変化が起きたとは思っていません。
GMが遠くに感じていた“その声に、どうこたえるか。”が、自分に関係のある身近な存在だということに気づいた、というのが正しいと思います。
揚羽さんのお仕事は、きっと変えることではなく、気づかせることだと思いましたね。

揚羽 黒田
気づかせる…確かにそうかもしれませんね。

今後の展望

― 今後はどのような展開をお考えでしょうか。

揚羽 黒田
今後は、現場の社員さまの1人ひとりが、それぞれの“声”を言語化していくフェーズになっていきます。
そこで出てくるものをいかに社内で流通させるか、あるいは社外へアピールしてもいいのではないか…などなど、今後の伴走に向けて、ブランド戦略室の皆さまと意見交換をさせて頂いている最中です。

ベルシステム24ホールディングス 河合さま
社内浸透という点では進めていることもありまして、現在、イントラネット内でこれまでの活動内容を全社に向けて発信しています。
例えば、各GMが考えた自身のマニフェストを、その背景にある想いとともに公開するようにしました。こうすれば他の事業部やグループが何をしているのかが分かるだけでなく、GMの人となりも垣間見ることができます。
個人にフォーカスをあてるという試み自体が今まであまりなかったので新鮮だったのか、ページビューも上がってきている印象です。皆、興味があるみたいですね。
私自身、ブランド戦略室に着任する前は現場でマネジメントをしていたので、本社からの情報がいかに現場まで伝わりにくいかということはよく理解しています。ですから、こうしてGM自身が継続的に発信をしていくのは大事なことだと思います。

ベルシステム24 インナーブランディング 対談

― ありがとうございます。今後について、ベルシステム24さまはどのような未来を見据えているのでしょうか。

ベルシステム24ホールディングス 山中さま
コンタクトセンター市場は今後、自動化の流れもあって提供するサービスの変革が必要だと思います。一方で、クライアント企業の事業多角化によりノンコア業務が増加しているため、BPO(Business Process Outsourcing)市場の観点で見れば成長傾向といえます。
まずは総合BPOカンパニーになるということを戦略として見据えていますが、そのためには今持っている強みに、別領域の知見を持った人物など、多様な人材を加えていくことが必要になります。
そこで重要になってくるのが、“その声に、どうこたえるか。”のフレームになります。
この言葉は、10,000人の社員がいれば10,000通りの定義が可能で、それらを積み上げていった姿こそがベルシステム24にとっての“その声に、どうこたえるか。”になると思っています。つまり、社員1人ひとりの行動の“総和”そのものがブランドになるわけですね。
この“総和”をどんな姿にしていくのかが重要になると考えています。
今後、成長によって事業が多角化するにつれ、必要な専門性や人材の多様化も避けては通れなくなります。そんな時に“その声に、どうこたえるか。”をフレームとして活用することで、あらゆる多様化を許容していける、そんな会社でありたいと思っています。

揚羽 黒田
その姿が見えるまで、我々も伴走させて頂きます。本日はありがとうございました。

弊社は、ブランド共創パートナーとして、理念・行動指針の策定から浸透活動まで一気通貫で伴走いたします。ぜひお気軽にご相談ください。