2024年10月31日(木)に、「企業理念やパーパスはなぜ必要なのか? ~事例と浸透におけるポイントを解説~」と題したセミナーを開催しました。株式会社揚羽 ブランディングコンサルタント/クリエイティブディレクターの應本幸紀が登壇し、企業理念やパーパスの必要性、重要性を踏まえ、事例や理念浸透におけるポイントについて解説しました。

「パーパス」策定は上場企業でも増加傾向

企業の存在価値を示した「パーパス」の注目度は年々高まっており、東証プライム市場に上場する1650社のうち、2024年現在では約14%に当たる236社がパーパスを策定。今後、策定を進める企業は、着実に増加することが見込まれています。

企業理念やパーパスが必要とされる理由として、改めて企業の存在価値を明示することの重要性、従業員が行動の指針とできる軸の必要性が高まっていることが挙げられるでしょう。企業がブレない軸を定めることが必要とされる背景には、下の図にある通り、「社会的な要因」と「社員を取り巻く要因」の2つが関係していると考えられます。

特に現代は、将来が不透明で、不安が大きい時代です。従業員が組織、そして社会とのつながりを持つためにも、企業のブレない軸が重要であり、その役割を果たすのが企業理念やパーパスなのです。ただし、企業理念、パーパスを策定し、ただ言葉として存在するだけでは機能しません。

そもそも、企業理念やパーパスが定義されていない組織も存在します。そのような組織では目的や方向性が個々人でバラバラになり、組織としての一体感が醸成されづらくなりがちです。企業が何を目指して事業に取り組んでいるのかが不明瞭だと、従業員としても「自分が何のために日々の業務を行なっているのか」がわからない状態になります。

一方で、企業理念、パーパスが定義されており、かつ認知されている状態では、組織の目的や方向性が統一できています。従業員にとっても自分の役割が大局的に理解できるため、目的意識を持って業務に取り組みやすくなります。

目指すべき理想は、企業理念、パーパスが認知され、かつ「自分ごと化」されている状態です。従業員が企業理念、パーパスを自分ごと化できていれば、目的や方向性に納得感を持っているため、組織の成長に対して主体的に取り組めます。

企業理念やパーパスを“お飾り”にしない

企業には多様な人材が集まります。入社の理由も、日々仕事をするモチベーションもさまざまでしょう。多様な想いをもつ個々人を、同じ方向に向かせるには、企業の根源的な精神となる「理念」と社会での存在意義を示す「パーパス」が欠かせません。

従業員が自社の企業理念やパーパスに共感できれば、従業員一人ひとりが「企業ブランドの体現者」となり、業績や企業価値向上に寄与してくれるはずです。従業員という「人」の底力を高めるためにも、企業理念やパーパスを軸とした「意義」でつながる組織づくりが重要なのです。

企業理念やパーパスが、“額に飾られているだけの言葉”にならないようにするには、浸透におけるフェーズごとのさまざまな課題に、根気よく向き合うことが求められます。各フェーズの課題としては、下記のようなものが考えられるでしょう。

これらの課題に対しては、解決の正攻法があると考えています。例えば、「認知」のフェーズでは「企業理念やパーパスに触れる機会を増やす」という施策が挙げられます。具体的には、社内ポスターの掲示や名刺への記載、パワーポイント資料にまとめて、いつでも閲覧できるようにするなど、タッチポイントの数を増やすことが有効です。

「理解」のフェーズでは、企業理念やパーパスに関する研修の実施、ブランドムービーやブランドブックによる発信など、従業員の記憶にしっかりと残るような施策が考えられます。

「共感・行動・相互理解」のフェーズでは、従業員同士がつながる仕組みづくりがポイントです。イントラネットや社内報、パーパスサイトやエピソードムービー・ブックといったツールの活用、パーパスアワードを開催し、どういった行動がパーパスの体現につながるかを伝えるというような施策も有効です。

浸透活動を成功させる3のツボ

  1. タッチポイントは多め
  2. 徹底的に「自分ごと化の機会」を提供
  3. 押しつけにならない浸透を演出

まずは従業員に、企業理念やパーパスの存在を知ってもらうことが必要です。認知フェーズで挙げたように、社内ポスターの掲示などの施策によってタッチポイントを数多く設置するのが肝心な点です。毎日何気なく目にすることで、企業理念、パーパスがより身近に感じられ、自然とその内容が認知されるでしょう。

企業理念、パーパスは概念的なものですから、ビジュアル化してそのイメージを明確にして、印象に残すことも大切です。企業理念やパーパスを自分ごと化してこそ、企業に相乗効果をもたらします。従業員に共感してもらい、実際の行動に移してもらうにも、このプロセスが欠かせません。ただ、浸透活動が押しつけにならないよう、従業員の主体性を引き出す演出も検討しましょう。

企業理念やパーパスの浸透活動事例

当社が、企業理念やパーパスの浸透活動を支援した事例を紹介します。

三井金属鉱業株式会社

浸透計画の策定からパーパスのビジュアル化、多数のクリエイティブ制作で支援しました。同社の浸透活動では、社内ポスターや広告、パーパススペシャルサイト、ムービーなどのさまざまなツールにより、多くのタッチポイントを設置しています。また現在は、創業150周年を迎えているタイミングということで、改めてパーパス浸透活動が進行中です。

某不動産ディベロッパー

「従業員の内発的動機を育て、挑戦する風土を醸成する」という目的のプロジェクトを2年以上継続する中で、ワークショップを活用した理念浸透や意識改革に取り組んでいます。ワークショップは理念、パーパスの「自分ごと化の機会」として有効な施策です。

まずは、企業理念と自身の価値観、挑戦行動を理解するための「シェア型ワークショップ」を2回実施。さらに、それまでのワークショップで明確にした自身の挑戦を、実践できた方から「挑戦の先にあった成功体験」を伝播する「レクチャー型ワークショップ」も実施しました。自分ごと化に取り組んだうえで、自身の振り返りと他従業員の成功体験を聞くことにより、相互理解を深められました。

パーソルテンプスタッフ株式会社

創業50周年を迎えたことを期に、浸透活動に取り組んだ事例です。同社では創業50周年記念企画として「創業の精神を伝えるキャラバン」を企画。歴代3人の社長が全国21拠点を回り、創業者の想いや過去のエピソードを直接伝える社内向けイベントを実施しました。

この事例でポイントとなるのは、押しつけにならないような演出をしたことです。イベントには参加したい人が参加する自由参加形式とし、現地での参加が難しい方に向けてオンラインの場も用意しました。

周年は理念浸透の大チャンス

企業理念、パーパスの浸透活動を実施するタイミングに決まりはありませんが、企業の周年は最適なタイミングだと考えています。そもそも、理念やパーパスは普遍的で、当たり前な言葉であるからこそ、日常的には意識されづらいものです。

だからこそ、従業員全員での定期的な振り返りが重要になります。企業が今日まで続いている「自社らしさ」を再確認してこそ、未来の企業の姿を作り上げることにつながります。こうした振り返りを、細かい理由付けなくして行えるのが「周年」の機会です。日常的な企業理念、パーパス浸透活動と並行して、さらに効果を高めるには、周年という絶好のチャンスを活かしましょう。

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