皆さま、こんにちは。揚羽のマーケティンググループです。

2024年7月9日(火)に、「定着率を高める!エンゲージメントを可視化し、内発的動機を高めるには」と題したセミナーを開催しました。

株式会社リーディングマーク ウェルビーイング事業部 アカウントエグゼクティブ マネージャーの野牧氏と、株式会社揚羽 ブランドコンサルティング部 部長の黒田が登壇し、特にに若手社員の内発的動機を高めるために効果的な手法や従業員向けのインナーブランディングを対外的に発信するアウターブランディングの事例をご紹介しました。

本レポートでは、弊社黒田の講演パートのサマリーをお伝えします。

揚羽 黒田
黒田 天兵
株式会社揚羽
ブランドコンサルティング部 部長

入社以降、「日本ではたらく人を元気にしたい」という信念のもと、企業の理念そのものから見直すインナーブランディングの専門家として、大小を問わず多種多様な企業やスポーツ団体など、300を超える組織の理念策定とその浸透活動に携わる。
著書:『組織は「言葉」から変わる。ストーリーでわかるエンゲージメント入門』(朝日新聞出版)
YouTube:『サステナブル・プロセス』にて変革(SX)に取り組む企業との対談コンテンツを公開。
次世代を担う層の内発的動機を高めながら推進する改革プロセスとは

エンゲージメント向上に取り組みたい企業の背景

課題の根本

“エンゲージメント”という概念は以前からありましたが、特に2017年頃から重要視されるようになり、2020年には一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)がエンゲージメントの重要性を発表しました。コロナ禍による社会の変化により一時落ち着くも、人的資本の流れもあり、現在、非常に注目される概念となっています。

2017年頃に遡り、なぜエンゲージメントという概念が出てきたのかというと、ずばり、根本は「今のままだと生き残れない、変革しなくては。」という経営者の方々の想いです。

この背景には、サステナビリティが大きく影響しています。例えば脱炭素、脱プラ、生産性向上や働き方の多様性、レジリエントな暮らし…というようなところに向けて、ビジネスの変革を余儀なくされている業界、企業が多くあるからです。

変革 ビジネス サステナビリティ

変革を実現する上での課題

一方で、新しい方向に舵を切ろうとしても、従業員がついてきてくれないというお悩みが多く聞かれます。

もちろん、今までやっていたことに愛着がある中で、新しいことに飛び込もうという方ばかりではないと思います。ですが、それ以前の問題として、日本社会全体に以下の6つの状況があります。

  1. 働き手の減少。そもそも人手不足の状況で、新しいことに目を向けるのが難しい。
  2. 国際競争力の低下。
  3. 人材競争力が低下。
  4. 従業員エンゲージメントが世界的に最低クラス。熱意ある社員の比率が5%
  5. 国際基準で見て若者の当事者意識が低い。
  6. 社外学習、自己啓発に消極的な人が多い。

日本 現状

また、パーソル総合研究所の『グローバル就業実態・成長意識調査』によると、日本の組織文化としては「権威主義・責任回避」の傾向があると言います。

「権威主義・責任回避」とは、「上層部の決定にはとりあえず従うという雰囲気がある。社内では波風を立てないことが何よりも重要とされる。物事は、オープンな議論ではなく、事前の根回しによって決定される。」ということを指し、自社に当てはめてしっくりくるという方も多いのではないでしょうか。

日本 組織文化

これらの影響もあり、各社さまからは、以下のようなお悩みもあるようです。

  • 社員にお膳立てされることに慣れすぎて、何もしない部長・役員がいる。
  • 他部署の愚痴を言い合っている。
  • 一度失敗したら二度と上に上がれないので、失敗しないようにする文化が根付いている。
  • 安定こそが正義、変化にはヒステリック、という風土がある。
  • 本社と現場に乖離があり、「また本社が寒いことやっている」という空気がある。

マッキンゼーの7Sフレームワーク

マッキンゼー・アンド・カンパニーの「7Sフレームワーク」においても、組織を変革するためには、組織を構成する要素のうち「ハード面」である戦略・組織・システム以外にも、「ソフト面」である価値観・スキル・人材・スタイルまで変革することが欠かせないと提唱されています。

これに気付いた企業が、いち早くエンゲージメントに着手していると捉えています。

マッキンゼー 7s フレームワーク

定着予算®という考え方

また、エンゲージメントに着手する際の予算の考え方をお伝えします。

実務経験の浅い従業員を1人採用したとき、採用費や給与などの発生するコストに対し、最初のうちは利益を生み出せないことが多いかと思います。そこから、2年目、3年目、4年目と教育等のさまざまな投資をした結果、売上・利益を生み出していくようになります。企業によって、一人前になる年数は異なりますが、今まで投資した以上の利益が出るようになり、損益分岐点を超え、企業にとっての利益が上がっていくのです。

しかし、多くの企業で起こっているのが、一人前になったタイミングでの大量の離職です。トータルで投資額と利益をみると赤字になってしまうケースです。

継続的に成長し続けている企業では、一人前になった後に、さらに上を目指せるよう支援したり、さらにやりがいを与えたりすることで、組織に定着してもらい、長く利益を拡大させていくための活動に予算をかけています。このように、従業員に定着してもらうための予算として「定着予算®」を確保すべきであると提唱しています。

採用予算、教育予算をとっている企業さまでも、定着予算®をとっているという企業さまは少ないかと思います。エンゲージメント向上のための予算と考えていただくと、考えやすくなるのではないかなと思います。

※定着予算🄬 は株式会社揚羽の登録商標です。

定着予算

エンゲージメントを高めるために効果的な手法とは

変革のSTEP

ここからは、企業をどう変革させていけばよいかお伝えします。

はじめに、エンゲージメント向上は、企業活動の一部でしかありません。最終的なゴールは、社会により良い影響を与えて、その対価として売上利益やブランドとしての評判を得ることです。

社会へのインパクトを生み出すためには、今までやってきたサービスを磨き上げて、ベストプラクティスと呼ばれる渾身のものに、もしくは、これまで取り組んでいなかったまったく新しい価値を生み出すことが必要です。それらを生み出すには、1人では限界があるので、社内外の仲間と切磋琢磨する必要があります。仲間と切磋琢磨するためには、一人ひとりの創意工夫をしようという意志が欠かせません。その意志がどこから生まれるかというと、会社として新しい変革のコンセプト、方向性にあります。

つまり企業変革のステップとは、会社の示すコンセプトに対して想いを持ち、仲間とベストプラクティスを創出し、社会にインパクトを与えるベストプラクティスや新しい価値を創出し、対価を得る、という順になります。

これらのステップは、分解しKPIに設定することができます。エンゲージメントは、ステップ1「社員一人ひとりの創意工夫の意志」の指標のひとつです。

どこを重点KPIとするかは、企業によって分かれますが、やはりステップ1で躓いてしまってる企業が多く見られます。そして売上との相関もある、ということで、エンゲージメントが非常に注目されているし、自社の従業員エンゲージメントを調べてみたら低いということが分かり、何とかしなくてはと取り組まれている企業さまが多いというわけです。

インナーブランディング 指標

エンゲージメントの構成要素

では、エンゲージメントを上げていくためにはどうすればよいでしょうか。

エンゲージメントに影響を与える項目はさまざまです。エンゲージメントとは「自分以外の誰か・何かに貢献しようという意欲」のことです。それを高めるためには、仕事のやりがいを感じたり、人間関係がよかったり、会社に愛着があったり、そもそも心身が健康だったり、といろいろな要素が必要となります。

そこで、各項目を分析して、弱い部分に対し施策を打っていく方法もあります。

エンゲージメント 構成要素

打ち手の一覧

エンゲージメント向上のための施策には、エモーショナル、ファンクショナルの2つに分類できます。エモーショナルとは、講話・講演や映像などの、心に訴えかける施策を指します。ファンクショナルとは、研修や制度、イベントなどの仕組み化された施策のことです。

また、施策ごとに、変革のコンセプトの浸透フェーズによって効果が変化します。下図はそれらを一覧化したものなので、ぜひ、施策検討の際に参考にしていただければと思います。

インナーブランディング 施策 一覧

施策設計のイメージ

そして、そのような施策を「認知→理解→共感・行動」というように、浸透のストーリーとして設計していきます。下図はその例です。

インナーブランディング 施策 設計

一番効く打ち手とは?

これまで、各社さまのエンゲージメントを高めるためいろいろなご支援をしてきましたが、結局一番重要だと感じているのは「変革のコンセプト策定から、社員を巻き込むこと」です。

一般的に、入社直後はエンゲージメントが高いのですが、長年経つと、経営で考えていることが現場に降りてくるようになり「現場のことがわかっていない」「勝手な方針を立てて無駄な施策ばかり」というようにエンゲージメントが下がっていくことが多くあります。これは避けられない事実だと考えています。

逆に、現場の皆さんを巻き込んで方針を立てれば、自分ごと化しやすくなるのです。策定に携わった方々は、前向きに取り組んでいただけるようになります。

イノベーター理論

次に、イノベーター理論を簡単にご紹介します。

改革に対してすでに行動している人は必ずいて、イノベーター理論でいうと「イノベーター」に分類されます。イノベーターの動きを見て、自分でも行動してみたいと思っているのが「アーリーアダプター」です。イノベーターとアーリーアダプターが16%を超えると、全体の雰囲気になっていくというのがイノベーター理論です。

前向きな社員が16%もいない、という企業ではなかなか変革が生まれにくいです。このような方々をできるだけ巻き込んで雰囲気を変えていこうとすると、変革がうまくいきます。

そのため弊社では、新しい方針を策定する際にはこの16%の方々を巻き込んでいくことを推奨しています。

イノベーター理論 浸透

事例紹介

セミナーでは、弊社が現在ご支援している、6万人の組織で全社員を巻き込んでパーパスを策定するプロジェクトや、会社として向かうべき方向性を俯瞰して事業戦略を導くプロジェクト、周年を通じたプロジェクトのご紹介をしました。

インナーからアウターへ「バタフライモデル™」の紹介

バタフライモデル™

最後に、弊社が提唱するブランドコミュニケーションの型「バタフライモデル ™」をご紹介しました。

今回お伝えした変革の流れに沿ってインナーブランディングに取り組み、そのプロセスを社外に向けて発信し、それが社員の誇りにつながる、という一気通貫した言行一致型のコミュニケーションの実現が重要です。

バタフライモデル

録画視聴のお申込み

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以上、2024年7月9日開催「定着率を高める!エンゲージメントを可視化し、内発的動機を高めるには」のセミナーレポートでした。