セミナーレポート~インターナルからはじめる、コーポレートブランディング戦略

皆様、こんにちは。営業部の石田です。

 
先日8月24日(水)に開催された、株式会社宣伝会議が主催する「コーポレートブランディングカンファレンス~インターナル(インナー)ブランディング編〜」に弊社ブランディングコンサルタントの板倉が登壇しました。
 

講演では、「インターナルからはじめる、コーポレートブランディング戦略」と題して、会社全体のブランディングの第一歩となるインターナル(インナー)ブランディングの重要性や実践する上で重要なポイントについてお話しました。
 

成功するインターナル(インナー)ブランディングのポイント

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スピーカー:板倉 マサアキ 氏
株式会社揚羽
ブランディングコンサルタント/クリエイティブディレクター

 

インターナル(インナー)ブランディングの重要性

はじめにインターナル(インナー)ブランディングの重要性についてです。
 

下図は、サービスプロフィットチェーンと呼ばれる、企業利益がどのような因果関係で成り立ってるのかを示したものです。図の左側にある経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)が、従業員のエンゲージメントや従業員の生産性向上につながり、従業員の満足度は顧客満足に直結します。顧客満足度が上がれば、顧客のロイヤリティが向上し、売上や利益という結果につながります。売上や利益を得ることにより、株主からの信頼を得ることができ、最終的に経営資源に返ってくる、企業価値が向上するという好循環を生むことができます。

 
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このような一連の活動全体を回していくのがコーポレートブランディングであり、図に示したように、組織内に働きかけるインターナル(インナー)ブランディングと組織外に働きかけるエクスターナル(アウター)ブランディングは密接に関係しています。これまではインターナル(インナー)ブランディングは業務外活動としてとらえられることが多かったですが、顧客満足度や利益に直結する重要な活動の一つであるということができます。
 

また、昨今は人的資本の価値を高める観点から、従業員のエンゲージメント指標についても株主は注目しています。時代の流れとあわせて、企業価値の向上に寄与するインターナル(インナー)ブランディングへの注目度は年々増していると言えます。
 

ポイント① 目的を設定する・効果を理解する

ここからはインターナル(インナー)ブランディングを成功させる上で重要となる4つのポイントを解説します。
 

1番目のステップは『目的地を設定する、効果を理解する』、2番目は『プロセスに社員を巻き込む』、3番目は『プロセスを価値に変える』、最後に『巻き込んだ社員を味方にする』という流れです。 
 
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まず1番目の『目的地を設定する、効果を理解する』については、インターナル(インナー)ブランディングに取り組むあらゆる企業の話を聞くと、「とりあえず理念ブックを作ろう」「ポスターや映像を作ろう」など目的を設定せず、施策に着手している方が多い印象を受けます。

 
また、目的を設定するためには、従業員がどのような仕組みで行動してくれるのかを知ることが重要です。

 
下図は、フォッグ式消費者モデルという人の行動原理に関する理論です。「B(行動)=M(モチベーション)×A(能力↔障壁)×T(トリガー)」という式で表されますが、理想的な行動は、モチベーションと能力、さらにトリガーの3つの要素がかけ合わさって実現するということを示しています。

 
インターナル(インナー)ブランディングの施策を考える上でも、感情に訴えかけモチベーションを上げる「エモーショナル」な施策とトリガーとなるような「ファンクショナル」な施策の両輪で考えていくことにより、従業員の行動を喚起することができます。
 
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また、インターナル(インナー)ブランディングにはあらゆる施策の選択肢があります。膨大な選択肢の中から、その目的や効果に合わせて施策を検討することが必要です。

 
例として、エモーショナルな施策の「講話」について考えてみます。社長による年頭の挨拶や全社員が集まる朝会などで話をするため、「認知、理解、共感、行動、定着、相互理解」という6ステップでいうと、「認知」に関して非常に効果が高い施策です。一方で、「理解、共感」に関しては時間が経過すると効果が薄れてしまいます。

 
その他には、「映像」という選択肢もあります。映像は、音楽やビジュアル、ナレーションによって、空気観のような曖昧なもの、ビジョンのような世界観を伝えることができます。「認知、理解」以上に、従業員に「共感」してもらう点で非常に効果があるといえます。
 
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施策ごとに期待できる効果は違うため、あらゆる施策を組み合わせ、目的地から逆算した設計をすることをおすすめします。

 
続いて、エンプロイージャーニーマップについてご説明します。インターナル(インナー)ブランディングのターゲットは従業員です。しかしながら、従業員と一言でいえど、20代の若手から50代のベテランまで属性は千差万別です。各人へのアプローチの方法は変わります。

 
着手するにあたって、社内でのインフルエンサーとなる社員の属性をあらかじめペルソナとして設定することを推奨します。ペルソナを設定した上で、カスタマージャーニーマップの従業員版であるエンプロイージャーニーマップを作成します。マーケティングと同様に「認知、理解、共感、行動」の4つのフェーズに分けて整理した上で、従業員がどのような感情になってほしいか、またどのようなタッチポイントがあるのか、そのためにどんな施策が必要なのかを考え、施策を洗い出していきます。
 
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現在同様に取り組まれている企業も、自分たちの行う施策が「認知、理解、共感、行動」のどのフェーズに対する施策であるのか、対策が不足する部分や施策が重複してる部分がないかを確かめる意味でも、一度ジャーニーマップに落とし込んで棚卸することは重要であるといえます。
 

ポイント② プロセスに社員を巻き込む

続いて、2番目の『社員を巻き込む』プロセスについてです。
 

インターナル(インナー)ブランディングは、まさに経営と現場を繋ぐ取り組みです。経営サイドだけで施策の開発や検討を行うのではなく、社員も巻き込んでいくことが必要です。
 

一方で、企業によってプロジェクトに巻き込むことができる社員数にはばらつきがあると思いますが弊社では、プロジェクトに関わる社員数に応じて、大きく分けて3通りの方法でプロジェクトを進行します。
 

1つ目は、『プロジェクトチームとしてターゲットの社員を巻き込む』方法です。施策の開発や検討の段階から、ターゲットとなる社員を巻き込み、社員と定期的なミーティングを行い、ディスカッションしながらプロジェクトを進めていきます。また、ターゲットとなる社員自身が浸透活動を検討し、実践していきます。

 
2つ目は、実際にターゲット社員がプロジェクトに参画できない場合に『ターゲット社員をインタビュー対象者として巻き込む』という方法です。複数名の社員にそれぞれ1時間~1時間半ほど時間をいただきインタビューを行います。「どういう内容であれば社内へ浸透しそうか」「仕事に関する悩みはないか」「現状発信しているメッセージに対してどういう風に思ってるのか」などについて質問し、回答をもとに施策を考えます。
 

3つ目は、「ターゲットの社員を一堂に集めワークショップを行う」です。
経営サイドだけでプロジェクトを進めるのではなく、従業員の方々に参加してもらうことで、従業員の納得度や当事者意識が向上します。
 

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ポイント③ プロセスを価値に変える

続いて、3番目の『プロセスを価値に変える』についてです。
 

インターナル(インナー)ブランディングは一連のプロセスが経営と現場の相互理解を深めていく作業であり、プロセス自体が企業にとって価値となります。プロジェクトの価値をさらに増大させるためにも、できる限り情報を開示しながらプロジェクトを進めていくことをおすすめします。
 

また、プロジェクトの過程を価値に変えるために、弊社では以下の3つの工夫を行っています。1つ目は、『経営層へのインタビュー内容は隠さずにドキュメントで配布』することです。インタビューを実施されるお客様は多数いらっしゃいますが、インタビューをその場限りのもの、プロジェクトチーム内に留めてしまうのはもったいないことです。従業員全員に読んでもらえるように、分かりやすくドキュメントに落とし込み全社に共有することをおすすめしています。ドキュメント化し共有することで、従業員全員が今の経営層が考えていることを理解し、経営層と従業員の相互理解がうまれるためです。
 

ドキュメント化することは、プロジェクトに取り組んだ時点でも意味をもちますが、プロジェクトから数年経った際により大きな効果をもちます。策定したメッセージにはどんな背景や想いがあったのかを振り返る材料となり、今後のブランドの財産になります。
 

2つ目は、『ワークショップでも同様に過程を記録する、保存する』ことです。ワークショップに参加できる社員数は限られますが、参加した社員の熱気やプロジェクトの真剣さを伝えるためにも、ワークショップの内容をまとめたり、雰囲気を伝えるために写真を撮ったり、オンラインワークショップでも会さの様子を画面のキャプチャを撮って保存しておくど、後に残るような形で保存しておくことが重要です。
 

3つ目は、『メッセージの導出過程を開示する』ことです。メッセージを策定する中で、メッセージ導出までのプロセスが、どんな調査に基づいて、どういう構造で、結果としてメッセージが策定されたという過程をドキュメントに落としこみ開示します。
こうしたプロジェクトによって導出した言葉やビジュアル自体も、重要な価値になるかと思いますが、こうしたプロセス自体を価値に変えられるようにドキュメントに残すことが大切です。
 
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ポイント④ 巻き込んだ社員を味方にする

最後にインターナル(インナー)ブランディングを成功させるポイントの4つ目『巻き込んだ社員を味方にする』についてです。

 

成功のポイントの2つ目『プロセスに社員を巻き込む』や3つ目『プロセスを価値に変える』の過程を経ることで、多くの場合において、プロジェクトに関わった社員は「自分の意見をきいてくれた」「メッセージには自分の意見が反映されている」などポジティブな意識になっています。

 
浸透活動は、「会社対全社員」という構図では難度が高くなります。こうしたプロジェクトに前向きな社員が、会社と社員の間に立つ旗振り役としてポジティブなメッセージを発信することにより浸透活動はどんどん加速していきます。

 
また、プロセスに関わった方々をアンバサダーとして正式に任命することも有効です。任命された社員は使命感をもって、自分の関わったメッセージを組織内へポジティブに拡げてくれます。

 
以上のように、インナーブランディングのプロジェクトには、より多くの社員を巻き込み、また巻き込んだ社員を味方にして、彼ら自身にメッセージの浸透活動を任せていくことが組織への浸透を加速させ、結果として組織のエンゲージメントの向上に寄与します。

 
まずはエンプロイージャーニーマップに則って、組織の現状を整理することから着手してみてはいかがでしょうか。
 
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本講演では、インターナル(インナー)ブランディングを成功させる上で重要な4つのポイントについてご説明させていただきました。
 

弊社は、課題の調査、発見から解決まで伴走してご支援させていただきます。
企業によって社風や文化は異なり、プロジェクトの進め方も異なります。
インターナル(インナー)ブランディングに関して、どのフェーズから着手すればいいのか、どのように進めていけばいいのかなど漠然としたお悩みでも、まずはお気軽にご相談くださいませ。
 

以上、8月24日(水)に開催された「コーポレートブランディングカンファレンス~インターナル(インナー)ブランディング編~」の開催レポートでした。
 

今後も皆さまのお悩みを解消できるようなセミナーを随時開催していきますのでご期待ください。