SDGsをビジネス視点で捉える

今回も引き続き、ディレクターの加藤がSDGs関連について取り上げていきたいと思います。
SDGsは、大企業や自治体を中心に社会課題解決のための戦略的な取り組みが進んでいますが、中小企業への浸透は限定的です。そこで、関東経済産業局ではSDGsを活用した地域中小企業等の企業価値向上・競争力強化を促進する支援モデルを発表しました。当社のYouTubeチャンネル「SDGsBiz」では、SDGsがビジネスを加速し、ビジネスがSDGsを達成へと導くことをテーマに、ビジネスに役立つ情報や、SDGsの達成に取り組む企業の事例を紹介しています。

 

当社のYouTubeチャンネル「SDGsBiz(エスディージーズビズ)」では、「SDGsはビジネスを加速させ、ビジネスはSDGsを達成へと導く」をテーマに、ビジネスに今すぐ役立つ生きた情報をお届けしています。ここでは「SDGsBiz」で紹介している17の目標の解説に加え、SDGsの達成に向けたビジネスに取り組む企業の事例を紹介していきます。

目標8「働きがいも経済成長も」を達成するためのターゲット

SDGsには、2030年までに達成すべき17の目標が設定されています。今回は目標8「働きがいも経済成長も」に焦点を当てます。

 

目標8「働きがいも経済成長も」は、すべての人のための継続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用、および働きがいのある人間らしい仕事を推進することをゴールとした目標です。この目標には、ターゲットと呼ばれる具体的な達成基準が10、実現のための方法が2つ示されています。日本ユニセフのサイトによれば、下記のように定義されています。

目標8のターゲット

 

SDGs

 

8-1
それぞれの国の状況に応じて、人びとが経済的に豊かになっていけるようにする。開発途上国、特に最も開発が遅れている国は、毎年少なくとも年7%の国内総生産(GDP)の成長を続けられるようにする。

※国内総生産(GDP):その国で1年間に新しく生み出されたモノやサービスの合計金額

 

8-2
商品やサービスの価値をより高める産業や、労働集約型の産業※を中心に、多様化、技術の向上、イノベーションを通じて、経済の生産性をあげる。

※労働集約型の産業とは、人の働きによる業務の割合が大きい産業のこと。たとえば、機械化されていない農業や、人がサービスを提供する仕事など。

 

8-3
働きがいのある人間らしい仕事を増やしたり、会社を始めたり、新しいことを始めたりすることを助ける政策をすすめる。特に、中小規模の会社の設立や成長を応援する。

 

8-4
2030年までに、消費と生産において、世界がより効率よく資源を使えるようにしていく。また、先進国が主導しながら、計画※にしたがって、経済成長が、環境を悪化させることにつながらないようにする。

※「持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組」のこと。2012年に、二酸化炭素の排出の少ない生活スタイルや社会の仕組みを作ることを目的に採択された計画

 

8-5
2030年までに、若い人たちや障害がある人たち、男性も女性も、働きがいのある人間らしい仕事をできるようにする。そして、同じ仕事に対しては、同じだけの給料が支払われるようにする。

 

8-6
2020年までに、仕事も、通学もせず、職業訓練も受けていない若い人たちの数を大きく減らす。

 

8-7
むりやり働かせること、奴隷(どれい)のように働かせること、人を売り買いすることを終わらせるために、効果的な取り組みを緊急におこない、子どもを兵士にすることをふくめた最悪の形の児童労働を確実に禁止し、なくす。また、2025年までに、あらゆる形の児童労働をなくす。

 

8-8
他の国に移住して働いている人、中でも女性、仕事を続けられるか不安定な状況で働いている人を含めた、すべての人の働く権利を守って、安全に安心して仕事ができる環境を進めていく。

 

8-9
2030年までに、地方の文化や産品を広め、働く場所をつくりだす持続可能な観光業を、政策をつくり、実施していく。

 

8-10
国内の金融機関の能力を強化し、すべての人たちが銀行や保険などのお金に関するサービスを使えるようにする。

 

8-a
拡大統合フレームワーク(EIF)※などを通して、開発途上国、特に、最も開発が遅れている国に対して、貿易のための援助を増やす。

※拡大統合フレームワーク(EIF)は、最も開発が遅れている国の発展や、持続可能な開発、貧困をなくすために貿易を使って支援するための、多国間のパートナーシップ

 

8-b
2020年までに、若い人たちの仕事についての世界的な戦略をつくって実行する。

 

「8-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
「8-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。

 

日本ユニセフ「SDGs CLUB」より

職場環境の改善は企業価値の向上と長期的な経済成長にもつながる

2008年のリーマンショック以降、世界中で失業率が深刻化する一方、後発開発途上国と呼ばれる国では、5歳から17歳までの子どもの5人に1人が労働を強いられているという背景があります。このような状況を打破し、一人ひとりが労働のみではなく生活や保障など多面的に充実していくためには、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)実現のための取り組みが世界的に進められています。そのためには、労働者の収入・健康・教育・就業環境を整える規定が必要です。

 

近年は、企業がインナーブランディングを行い、雇用環境の改善を含めた意識改革を進める例も増えています。従業員にとって満足な職場を提供することは、企業の採用力の向上にもつながります。また、ESG企業として企業価値が向上することも期待できます。これらの取り組みが進むことで、世界中でディーセント・ワークが実現し、より豊かな社会が実現されることを期待しています。

ビジネスとして「働きがいも経済成長も」に取り組む企業の事例紹介

ここからは、はたらきがいと経済成長を両立させる世界を実現するために取り組みを実施している企業の事例を紹介します。

◎企業事例 【ヤマハ発動機】ビジネスを成長させながら地域の経済発展を支援

SDGs目標8については、企業内での育成や採用取り組みに力を入れている企業が多いと思われますが、実際にビジネスとして取り組んでいる企業はまだ少ないと言えます。この目標をビジネスとして取り入れる上で重要となるのが、「BOPビジネス」です。

 

BOPとは、経済ピラミッドの底辺にいる年間所得3,000ドル未満で生活している約40億人を、市場経済の一員として取り込み、新たな巨大市場と捉えるビジネスのことです。

 

BOPビジネスを先導する企業の一つがヤマハ発動機です。
同社では、漁船やプレジャーボートの船体に用いられる素材FRP(Fiber Reinforced Plastics)の加工研究を長年行っています。ヤマハはそれまで主流だった伝統的な木造船の機能や形状を残しながら、その加工技術を用いて耐久性の高いFRPに切り替えていきました。やがてその技術は、船体を成形するための「型」と、それを使って加工する職人の「技」を伴って、技術援助の名のもとに日本から世界に広がって行きました。

 

1960年代には、アフリカ各国の漁村において手漕ぎ木製ボートに船外機を取り付けたFRPボートを導入。漁法の指導を行いながら、漁業の発展を支援することで市場を開拓しました。それまでは行けなかった遠くの場所まで漁業ができたり、船内の生け簀(いけす)の衛生面が保たれることによって、質の高い魚を流通させることができるようになりました。その結果、一人ひとりの所得を上げ、地域全体の経済を発展させました。

 

アフリカでの成功を足がかりに、その後は他の新興国・途上国でも市場開拓を進め、ヤマハ発動機は現在、140カ国以上の新興国・途上国でビジネスを展開しています。

 

ヤマハ発動機「メイド・イン・モーリタニア、国境を越えた師弟関係」より

ヤマハ発動機「漁業近代化」(YouTube)より

ヤマハ発動機「ヤマハの​​SDGsに関連した取り組み事例」より

 

BOPビジネスに参入する企業は、そのまま社会的価値を創造する企業として認知されます。結果、BOP市場だけでなく、グローバル市場においても企業イメージを向上でき、ブランド確立にもつながっていくのです。

YouTubeチャンネル「SDGs Biz」にて、SDGsとビジネスの関係を動画で解説

揚羽では、SDGsとビジネスの関係をテーマにしたYouTubeチャンネル「SDGs Biz(エスディージーズビズ)」を運営しています。SDGsとビジネスをつなげるために役立つ、生きた情報を発信しています。

 

今回取り上げた目標8「働きがいも経済成長も」についても、ここに紹介した事例とは別のビジネスを取り上げて詳しく解説しています。ビジネスでこの目標に向き合い、達成するためのヒントとしてぜひご活用ください。

 

 

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