SDGsをビジネス視点で捉える

みなさま、こんにちは。ディレクターの松村です。
近年、SDGsという言葉は広く知れ渡り、2021年11月にはその年に最も話題になった言葉を選ぶ『現代用語の基礎知識選 2021ユーキャン新語・流行語大賞』のノミネート30語にランクインされました。一般向けのメディアでは、生活者に向けて自然保護やエコロジー活動として語られることが多いかと思います。単なる流行で終わらせないためには、企業による活動が不可欠です。

 

当社のYouTubeチャンネル「SDGsBiz(エスディージーズビズ)」では、「SDGsはビジネスを加速させ、ビジネスはSDGsを達成へと導く」をテーマに、ビジネスに今すぐ役立つ生きた情報をお届けしています。ここでは「SDGsBiz」で紹介している17の目標の解説に加え、SDGsの達成に向けたビジネスに取り組む企業の事例を紹介していきます。

 

目標4「質の高い教育をみんなに」を達成するためのターゲット

SDGsには、2030年までに達成すべき17の目標が設定されています。今回は目標4「質の高い教育をみんなに」に焦点を当てます。

 

目標4「質の高い教育をみんなに」は、だれもが公平に、良い教育を受けられるように、また一生に渡って学習できる機会を広めることをゴールとした目標です。この目標には、ターゲットを呼ばれる具体的な達成基準が7つ、実現のための方法が3つ示されています。日本ユニセフのサイトによれば、下記のように定義されています。

 

目標4のターゲット

 

SDGs

 

4-1
2030年までに、男の子も女の子も、すべての子どもが、しっかり学ぶことのできる、公平で質の高い教育を無料で受け、小学校と中学校を卒業できるようにする。

 

4-2
2030年までに、すべての子どもが、幼稚園や保育園にかよったりして、小学校にあがるための準備ができるようにする。

 

4-3
2030年までに、すべての人が、男女の区別なく、無理なく払える費用で、技術や職業に関する教育や、大学をふくめた高等教育を受けられるようにする。

 

4-4
2030年までに、はたらきがいのある人間らしい仕事についたり、新しく会社をおこしたりできるように、仕事に関係する技術や能力をそなえた若者やおとなをたくさん増やす。

 

4-5
2030年までに、教育のなかでの男女の差別をなくす。障がいがあったり、先住民族だったり、特にきびしいくらしを強いられている子どもでも、あらゆる段階の教育や、職業訓練を受けることができるようにする。

 

4-6
2030年までに、すべての若者や大半のおとなが、男女ともに、読み書きや計算ができるようにする。

 

4-7
2030年までに、教育を受けるすべての人が、持続可能な社会をつくっていくために必要な知識や技術を身につけられるようにする。そのために、たとえば、持続可能な社会をつくるための教育や、持続可能な生活のしかた、人権や男女の平等、平和や暴力を使わないこと、世界市民としての意識、さまざまな文化があることなどを理解できる教育をすすめる。

 

4-a
子どものこと、障がいや男女の差などをよく考えて、学校の施設を作ったり、なおしたりし、すべての人に、安全で、暴力のない、だれも取り残されないような学習のための環境をとどける。

 

4-b
2020年までに、開発途上国、特に最も開発が遅れている国、島国やアフリカの国などの人が、先進国や他の国で、職業訓練、情報通信技術、科学技術のプログラムなどの高等教育を受けるための奨学金の数を世界的にたくさん増やす。

 

4-c
2030年までに、開発途上国、特に開発が遅れている国や島国で、学校の先生の研修のための国際協力などを通じて、知識や経験のある先生の数をたくさん増やす。

 

「4-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
「4-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。

 

日本ユニセフ「SDGs CLUB」より
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/4-education/

 

成熟した教育ビジネス市場に必要なのは、義務教育の外に目を向けること

なぜこの「質の高い教育をみんなに」という目標が必要なのでしょうか。教育を受けられないままでは、文字の読み書きができず、基本的な計算能力も身につけることができず、職を得る機会を失ってしまいます。また、ジェンダーや地域、障がいの有無による教育格差は偏見を生み、差別が繰り返されてしまいます。教育は、貧困や差別といった世界の格差を根本から解消するために重要なのです。

 

では、日本の現状はどうでしょうか。日本には小学校6年間、中学校3年間の義務教育制度があり、識字率も99%(※)と問題がない国に見えるかもしれません。しかし近年、経済格差から生まれる子どもへの教育格差が浮き彫りになってきました。

 

2019年の国民生活基礎調査(※)では、2018年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は127万円で、「相対的貧困」(貧困線に満たない世帯員の割合)は15.4%でした。「子どもの貧困」(17歳以下)の場合は13.5%にのぼり、7人に1人が貧困状態にあるという事実が突きつけられます。家庭環境の格差は、家庭の学習環境だけでなく学習塾への通塾なども含まれ、大学進学率などといった学歴格差にも影響を与えます。

 

さらに地域によっては、大学がない、進学校がないなど、教育を受けることへの意識の違いもあります。教育現場で深刻ないじめ、不登校などの問題によって、学校へ満足に通えない子どもいます。

 

日本の教育格差は、義務教育だけでは補いきれないところに原因があるのです。

 

※厚生労働省 各種世帯の所得等の状況・2019年調査より(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/03.pdf

 

ビジネスとして「質の高い教育をみんなに」に取り組む企業の事例紹介

ここからは、誰もが質の高い教育を受けられるように教育ビジネスに挑む企業の事例を紹介します。

 

◎企業事例1 【学校法人角川ドワンゴ学園 N高・S高】ネットの高校を創設

学校法人角川ドワンゴ学園 N高・S高は、KADOKAWAとドワンゴが共同で運営するネットの高校です。インターネットとICTツールを活用し高卒資格取得だけでなく、プログラミングやWebデザイン、中学復習講座まで幅広い学びが体験できます。

 

「子どもが親や世間に対して、通信制高校を前向きな選択として語れるように」という想いが込められた学校であり、不登校などで悩む子どもにも、専門的な勉強したい子どもにも、社会を生き抜くスキルと多様な体験を提供しています。

 

学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校・S高等学校「ネットの高校とは」より
https://nnn.ed.jp/about/

 

◎企業事例2 【グロービス】オンライン教育で、教育に利便性を生み出す

グロービスはMBA取得に向けた大学院運営やビジネススクールを展開している企業で、経営を学びたい社会人向けに動画コンテンツによるオンライン教育サービスを展開しています。

 

忙しい社会人にとって、学びたい意欲は手間、時間、コストによって断念されてしまうものです。また、Eラーニングは続かないとも言われています。同社は見る人が飽きずに勉強を続けられるよう、動画の視聴率などによって動画の作り直しを行い、PDCAを回すことでより動画を最後まで見る割合を高く保っています。

 

同社は、学びたい社会人に教育の機会を与え、人を育て、ベンチャー企業への投資をすることで、日本経済への貢献することをビジョンにしています。教育ビジネスを社会に役立てるモデルをつくりあげたと言えるでしょう。

 

グロービス「グロービス・ビジョン」より
https://globis.co.jp/vision/

 

YouTubeチャンネル「SDGs Biz」にて、SDGsとビジネスの関係を動画で解説

揚羽では、SDGsとビジネスの関係をテーマにしたYouTubeチャンネル「SDGs Biz(エスディージーズビズ)」を運営しています。SDGsとビジネスをつなげるために役立つ、生きた情報を発信しています。

 

今回取り上げた目標4「質の高い教育をみんなに」についても、ここに紹介した事例とは別のビジネスを取り上げて詳しく解説しています。ビジネスでこの目標に向き合い、達成するためのヒントとしてぜひご活用ください。

 

 

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