SDGsをビジネス視点で捉える

こんにちは。制作ディレクターのヒナタです。
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標です。地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓い、発展途上国のみならず、日本を含む先進国も積極的に取り組んでいます。

 

当社のYouTubeチャンネル「SDGsBiz(エスディージーズビズ)」では、「SDGsはビジネスを加速させ、ビジネスはSDGsを達成へと導く」をテーマに、ビジネスに今すぐ役立つ生きたSDGs情報をお届けしています。ここでは「SDGsBiz」で紹介している17の目標の解説に加え、SDGsの達成に向けたビジネスに取り組む企業の事例を紹介していきます。

目標3「すべての人に健康と福祉を」を達成するためのターゲット

SDGsには、2030年までに達成すべき17の目標が設定されています。今回は目標3「すべての人に健康と福祉を」に焦点を当てます。

 

目標3「すべての人に健康と福祉を」は、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」をテーマに、ターゲットを呼ばれる具体的な達成基準が9つ、実現のための方法が4つ示されています。日本ユニセフのサイトによれば、下記のように定義されています。

目標3のターゲット

 

3-1
2030年までに、赤ちゃんがおなかの中にいるときや、お産のときに、命を失ってしまうお母さんを、2030年までに、産まれる赤ちゃん10万人あたり70人未満まで減らす。

 

3-2
すべての国で、生まれて28日以内に命を失う赤ちゃんの数を1000人あたり12人以下まで、5さいまでに命を失う子どもの数を1000人あたり25人以下まで減らし、2030年までに、赤ちゃんやおさない子どもが、予防できる原因で命を失うことがないようにする。

 

3-3
2030年までに、エイズ、結核、マラリアや、これまで見放されてきた熱帯病などの伝染病をなくす。また、肝炎や、汚れた水が原因で起こる病気などへの対策をすすめる。

 

3-4
2030年までに、予防や治療をすすめ、感染症以外の病気で人々が早く命を失う割合を3分の1減らす。心の健康への対策や福祉もすすめる。

 

3-5
麻薬を含む薬物やアルコールなどの乱用を防ぎ、治療をすすめる。

 

3-6
2020年までに、交通事故による死亡やけがを半分にまで減らす。

 

3-7
2030年までに、すべての人が、性や子どもを産むことに関して、保健サービスや教育を受け、情報を得られるようにする。国はこれらを国の計画のなかに入れてすすめる。

 

3-8
すべての人が、お金の心配をすることなく基礎的な保健サービスを受け、値段が安く、かつ質の高い薬を手に入れ、予防接種を受けられるようにする(ユニーバーサル・ヘルス・カバレッジ)。

 

3-9
2030年までに、有害な化学物質や、大気・水・土壌の汚染が原因で起こる死亡や病気を大きく減らす。

 

3-a
すべての国で、たばこを規制する条約で決められたことが実施されるよう、必要に応じて取り組みを強める。

 

3-b
主に開発途上国で大きな影響をおよぼす病気に対するワクチンや薬の開発を助ける。また、国際的な約束や宣言にしたがって、安い値段で薬やワクチンを開発途上国にも届けられるようにする。

 

3-c
開発途上国、特に、最も開発が遅れている国や島国で、保健に関わる予算と、保健サービスに関わる職員の数や能力、その人たちへの研修を大きく増やす。

 

3-d
すべての国、特に開発途上国において、その国や世界で健康をおびやかす危険な状態が発生したときに、それにすばやく気づいて知らせ、危険な状態を減らしたり、対応したりする力を強める。

 

「3-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
「3-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。

 

日本ユニセフ「SDGs CLUB」より

国・地域によって大きな差が生じる健康と福祉のリスクの現状

すべての人には健康に生きるための医療、福祉サービスを受ける権利があります。しかし、置かれた環境によって健康リスクに大きな差が生じています。日本ユニセフのサイトによれば、5歳の誕生日を迎えられずに人生を終えてしまう子どもは年間520万人(2019年)。病院や医師が不足し、医療体制が整っていない国と地域がまだたくさんあり、経済的な理由で治療を受けることができない貧しい人たちが犠牲になっているのが現実です。

 

こうした場所では子どものみならず女性が妊娠・出産で命を失うリスクが高く、結核、マラリアとったワクチンや予防法がある感染症で命を落とす人も少なくありません。肺炎や下痢などの病気で命を落とすケースも多く、救えるはずの命が奪われ続けている現実を変えていく必要があります。

 

一方、日本は世界トップクラスの長寿国ですが、高齢者の医療費や介護費が増大し、それを支える若い世代への負担が増えています。今後は、目標3でも掲げられているユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要なときに、負担可能な費用で享受できる状態)を維持し続けることが、簡単ではなくなる可能性もあります。

ビジネスとして「すべての人に健康と福祉を」に取り組む企業の事例紹介

ここからは、誰もが健康で幸せな生活を送るためのビジネスに挑む企業の事例を紹介。日本企業ならではの技術力を活かして取り組む先進的なビジネスを取り上げます。

◎企業事例1 【住友化学】マラリアに苦しむ人々に向け独自技術と防虫剤を融合した蚊帳を開発

総合化学メーカーの住友化学は、マラリアに苦しむ人々のために防虫剤処理蚊帳「オリセット ネット」を開発。2001年にはWHO(世界保健機関)から世界で初めて長期残効型蚊帳としての効果が認められ、その使用が推奨されています。現在、ユニセフなどの国際機関を通じて、アフリカをはじめ約100の国と地域に供給されています。

 

住友化学「住友化学のマラリアへの取り組み」より

◎企業事例2 【富士通】スーパーコンピュータとAIを用いて、新たながん治療法を発見

総合ITベンダーの富士通は、新たながん治療法の発見を実現しています。従来、がんに関連する病態を予測する計算は、大学などで利用可能なスーパーコンピュータを用いても数カ月かかっていました。そのため、個々の遺伝子レベルではわからない新たながんのメカニズムを発見し、研究に取り入れることが困難と言われていました。

 

これに対して富士通は、東京医科歯科大学との共同研究により、がんの浸潤や転移を予測する計算をスーパーコンピューター「富岳」とAI技術で行った結果、わずか1日以内で実現。この大きな進展によって、新たながん治療法の発見が期待されています。

 

同社ではこの他にも、東京大学先端科学技術研究センターとの共同研究により、AI技術と「富岳」を活用した新型コロナウイルス治療薬開発につながる感染阻害分子機構の解明にも取り組むなど、国民の健康な暮らしを守るために自社の技術力を積極的に活用しています。

 

富士通「SDGsへの取り組み」より

YouTubeチャンネル「SDGs Biz」にて、SDGsとビジネスの関係を動画で解説

揚羽では、SDGsとビジネスの関係をテーマにしたYouTubeチャンネル「SDGs Biz(エスディージーズビズ)」を運営しています。SDGsとビジネスをつなげるために役立つ、生きた情報を発信しています。

 

今回取り上げた目標3「すべての人に健康と福祉を」についても、ここに紹介した事例とは別のビジネスを取り上げて詳しく解説しています。ビジネスでこの目標に向き合い、達成するためのヒントとしてぜひご活用ください。

 

 

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