SDGsをビジネス視点で捉える

こんにちは。ディレクターのヒナタです。SDGsやサステナビリティは、現代を生きる私たちの中に生まれた新しい価値観として社会に広がり続けています。SDGS17の目標は、地球上の人類が誰一人取り残されることなく暮らし続けるために、2030年までに達成すべき項目として2015年に国連で採択されました。

 

SDGsの認知度は上昇し続け、消費者が商品を購入するときにもSDGsを意識しているか、環境に考慮されているかという点は重視されつつあります。簡易包装による商品やラベルレスのペットボトルの拡大などは、その好例でしょう。
つまり、ただ今の利益を追い求めるだけではなく、未来の社会のために、今どんな行動を実施できているのか。それが企業と商品の新しい価値となったといえます。

 

当社のYouTubeチャンネル「SDGs Biz(エスディージーズビズ)」では、「SDGsはビジネスを加速させ、ビジネスはSDGsを達成へと導く」をテーマに、ビジネスに今すぐ役立つ生きた情報をお届けしています。ここでは「SDGs Biz」で紹介している17の目標の解説に加え、SDGsの達成に向けたビジネスに取り組む企業の事例を紹介していきます。

 

目標11「住み続けられるまちづくりを」を達成するためのターゲット

SDGsには、2030年までに達成すべき17の目標が設定されています。今回は目標11「住み続けられるまちづくりを」に焦点を当てます。

 

目標11「住み続けられるまちづくりを」は、包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現することをゴールとしています。この目標には、ターゲットと呼ばれる具体的な達成基準が7つ、実現のための方法が3つ示されています。日本ユニセフのサイトによれば、下記のように定義されています。

目標11「住み続けられるまちづくりを」を達成するためのターゲット

SDGs
11-1
2030年までに、すべての人が、住むのに十分で安全な家に、安い値段で住むことができ、基本的なサービスが使えるようにし、都市の貧しい人びとが住む地域(スラム)の状況をよくする。
11-2
2030年までに、女性や子ども、障害のある人、お年寄りなど、弱い立場にある人びとが必要としていることを特によく考え、公共の交通手段を広げるなどして、すべての人が、安い値段で、安全に、持続可能な交通手段を使えるようにする。
11-3
2030年までに、だれも取り残さない持続可能なまちづくりをすすめる。すべての国で、だれもが参加できる形で持続可能なまちづくりを計画し実行できるような能力を高める。
11-4
世界の文化遺産や自然遺産を保護し、保っていくための努力を強化する。
11-5
2030年までに、貧しい人びとや、特に弱い立場にある人びとを守ることを特に考えて、水害などの災害によって命を失う人や被害を受ける人の数を大きく減らす。世界の国内総生産(GDP)に対して災害が直接もたらす経済的な損害を大きく減らす。
11-6
2030年までに、大気の質やごみの処理などに特に注意をはらうなどして、都市に住む人(一人当たり)が環境に与える影響を減らす。
11-7
2030年までに、特に女性や子ども、お年寄りや障がいのある人などをふくめて、だれもが、安全で使いやすい緑地や公共の場所を使えるようにする。
11-a
国や地域の開発の計画を強化して、都市部とそのまわりの地域と農村部とが、経済的、社会的、環境的にうまくつながりあうことを支援する。
11-b
2020年までに、だれも取り残さず、資源を効率的に使い、気候変動への対策や災害への備えをすすめる総合的な政策や計画をつくり、実施する都市やまちの数を大きく増やす。「仙台防災枠組2015-2030」にしたがって、あらゆるレベルで災害のリスクの管理について定め、実施する。
11-c
お金や技術の支援などによって、もっとも開発の遅れている国ぐにで、その国にある資材を使って、持続可能で災害にも強い建物をつくることを支援する。
「11-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
「11-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。

日本ユニセフ「SDGs CLUB」より

まさに日本が直面している人口集中問題

目標11達成の大きな弊害として、都市部への人口集中が挙げられます。都市に人口が集中することにより、交通渋滞や交通事故の増加、大量発生する排気ガスやゴミ、スラム化による治安の悪化、さらに自然災害のリスク増加など多くの問題が引き起こされます。

日本も例外ではなく、今後も東京圏の一極集中化は加速していくといわれています。総務省のデータでは、2050年には人口の32%を東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)が占めると考えられています。これは地方の過疎化も意味し、2050年までに日本の無居住地域は6割にも昇ると見られています。街や文化が消失し続けることは日本全体に大きな悪影響をもたらすため、見逃すことができない問題といえるでしょう。

総務省「都市部への人口集中、 大都市等の増加について」(PDF)

ビジネスとして「住み続けられるまちづくりを」に取り組む企業の事例紹介

ここからは、目標11「住み続けられるまちづくりを」の取り組みをビジネスで実施している企業の事例を紹介します。

 

◎企業事例1 【UR都市機構】団地が地域の新しい拠点へ

1967年に街開きした大阪府堺市にある泉北ニュータウン。50年以上経過した団地は、人口減少や高齢化が課題となっていました。2017年、UR都市機構は団地の賑わいを取り戻すべく、堺市と共に「団地コンバージョン推進モデル事業」の取り組みを始めました。

まず北欧の価値観と団地本来の和の融合「#Japandi」(ジャパンディ)をテーマとした住戸のリノベーションを実施。これが若年層に受け、空き家が多かった団地に入居が増加しました。さらに、団地の集会所の一部を「モモポート」というコミュニケーションスペースへと進化させました。ここを拠点に団地や周辺の住人が気軽に参加できる習い事やイベントを実施することで、地域の活性化につなげています。
住戸やコミュニケーションのあり方を見つめ直し、多様な世代がいきいきと暮らす新しいニュータウンの魅力づくりを成功させた事例といえるでしょう。

UR都市機構「【楽しい団地】泉北桃山台一丁団地(大阪府堺市)」より

◎企業事例2 【大和ハウス工業】過去に手がけた街に賑わいをもたらす

住宅総合メーカーの大和ハウス工業が1970年代に開発した郊外型戸建住宅地「ネオポリス」は、少子高齢化による地域コミュニティの希薄化、空き家の増加などの課題に直面しています。そこで同社は、自分たちが過去に手掛けた街を「再耕(さいこう)」する「リブネスタウンプロジェクト」を推進しています。「再耕」とは元通りに再生するのではなく、新たな街の魅力を創出したいという思いが込められた同社による造語です。

例えば横浜市の上郷ネオポリスには、コンビニエンスストア併設型のコミュニティ拠点を開設。コンビニの横にコミュニティスペースを設け、住民がイベントを開催したり、集まって食事をしたりできる場としています。また、コンビニの店員や施設運営ボランティアは地域住民が担い、高齢者が若者と一緒に生き生きと働く場となっています。
他の地域でも、花の栽培施設を建設して新たな雇用を創出するなど、地域が抱える課題解決と新たな賑わいを地元の住人と共創する取り組みが続けられています。

大和ハウス工業「リブネスタウンプロジェクト」

YouTubeチャンネル「SDGs Biz」にて、SDGsとビジネスの関係を動画で解説

揚羽では、SDGsとビジネスの関係をテーマにしたYouTubeチャンネル「SDGs Biz(エスディージーズビズ)」を運営しています。SDGsとビジネスをつなげるために役立つ、生きた情報を発信しています。
今回取り上げた目標11「住み続けられるまちづくりを」についても、ここに紹介した事例とは別のビジネスを取り上げて詳しく解説しています。ビジネスでこの目標に向き合い、達成するためのヒントとしてぜひご活用ください。

 

 

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