SDGsをビジネス視点で捉える

こんにちは。制作ディレクターのヒナタです。
近年、テレビの情報番組でもたくさん取り上げられるようになった「SDGs」という言葉。一般向けのメディアでは、自然保護やエコロジー活動などとの結びつきで語られることが多い印象ですが、ビジネスとも密接につながっています。ここではSDGsの概要と、それに関連したビジネスや企業の具体的な取り組み事例を解説。SDGsとビジネスで悩む人を、誰ひとり取り残さないYouTubeチャンネル「SDGsBiz」では、「SDGsはビジネスを加速させ、ビジネスはSDGsを達成へと導く」をテーマに、ビジネスに今すぐ役立つ生きた情報をお届けしています。今回はSDGsBizで紹介している17の目標の解説と事例を紹介していきます。

目標1「貧困をなくそう」を達成するためのターゲット

SDGsには、2030年までに達成すべき17の目標が設定されています。今回は目標1「貧困をなくそう」に焦点を当てます。

 

目標1「貧困をなくそう」は、世界のあらゆる場所で、あらゆる形態の貧困を終わらせることをゴールとした目標です。この目標にはターゲットと呼ばれる具体的な達成基準が5つ、実現のための方法が2つ示されています。日本ユニセフのサイトによれば、下記のように定義されています。

目標1のターゲット

 

1-1
2030年までに、世界中で「極度に貧しい(※1)」暮らしをしている人をなくす。

 

1-2
2030年までに、それぞれの国の基準でいろいろな面で「貧しい」とされる男性、女性、子どもの割合を少なくとも半分減らす。

 

1-3
それぞれの国で、人びとの生活を守るためのきちんとした仕組みづくりや対策をおこない、2030年までに、貧しい人や特に弱い立場にいる人たちが十分に守られるようにする。

 

1-4
2030年までに、貧しい人たちや特に弱い立場にいる人たちをはじめとしたすべての人が、平等に、生活に欠かせない基礎的サービスを使えて、土地や財産の所有や利用ができて、新しい技術や金融サービスなどを使えるようにする。

 

1-5
2030年までに、貧しい人たちや特に弱い立場の人たちが、自然災害や経済ショックなどの被害にあうことをなるべく減らし、被害にあっても生活をたて直せるような力をつける。

 

1-a
開発途上国、特に最も開発が遅れている国で、「貧しさ」をなくすための計画や政策を実行していけるよう、いろいろな方法で資金をたくさん集める。

 

1-b
それぞれの国や世界で、貧しい人たちのことや男女の違いなどをよく考えて政策をつくり、「貧しさ」をなくすためのとりくみにもっと資金などを増やして取り組めるようにする。

 

「1-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
「1-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。

 

(※1)1日あたりに使えるお金が(食事、水、電気、住むところや着るもの、くすりなどすべて合わせて)1.9米ドル(約200円)未満で生活しなければならない状態。

 

日本ユニセフ「SDGs CLUB」より

日本でも7人に1人が「相対的貧困」。貧困は他人ごとではない深刻な社会課題

日本ユニセフのサイトによれば、1日あたり1.90米ドル(約200円)以下で暮らしている人は7億960万人。そのうち約半数が子どもで、3億5600万人にものぼります。こうした生きることもままならない状態を「絶対的貧困」と呼びます。

 

豊かな国と言われる日本においても、対岸の火事ではありません。貧困には、所属する社会の一般的な水準より低い状況で暮らさなければいけない「相対的貧困」と呼ばれる形もあります。具体的には「世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない人々」と定義され、日本では7人に1人の子どもが「相対的貧困」の状況(※2)に置かれていると言われています。

 

(※2)2019年 国民生活基礎調査の概況より

カギは社会課題の解決を目指すBOPビジネス、あるいはソーシャルビジネス

世界人口の3分の2は貧困層に属していると言われ、多くの場合、深刻な環境汚染や紛争など社会的な問題を抱えています。彼らは自力で環境改善するのが難しい状況にあるため、長らく援助対象として捉えられてきましたが、近年はこの層を意識したビジネスも登場しています。

 

ビジネスモデルとしては「BOPビジネス」が有名です。BOPとは「Base of the Economic Pyramid」の略。ピラミッド(Pyramid)という言葉が使われているのは、貧困層、中間層、富裕層の3層のうち、最も人口規模が多い貧困層をターゲットにしているビジネスだからです。

 

BOPビジネスは、SDGs達成のための有効な手段と見られています。貧困層に対して、質の高い商品やサービスが提供されるようになれば、健康や福祉、教育など貧困にまつわる問題を解決できる可能性があります。同時に企業にとってはこの取り組みを成功させることで、人口規模が多い貧困層を対象とした新たな市場を開拓し、大きなビジネスに発展させることができるという魅力があるのです。

 

最近は「ソーシャルビジネス」という概念も注目されています。BOPビジネスは企業の利益を追求することが主題であり利益は株主に配分されますが、ソーシャルビジネスの場合は利益を再び社会課題の解決に使うという点が異なります。企業やメディアによって使う言葉や捉え方が異なる場合もあるようですが、ビジネスで社会課題を解決するという考え方は同じです。

ビジネスとして貧困撲滅に取り組んだ企業の事例紹介

ここからは貧困をなくすためのビジネスに取り組んだ企業の事例を紹介します。世界規模で展開された有名な成功事例に加え、日本の貧困解消に取り組んだ企業の事例も取り上げます。

◎企業事例1 【ユニクロ】バングラデシュの貧困撲滅を目指す「グラミンユニクロ」

日本発のファストファッションブランド、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、2010年にバングラデシュのグラミン銀行グループのグラミン・ヘルスケア・トラストと合弁で「グラミンユニクロ」を設立し、貧困撲滅を目指すビジネスを展開しています。

 

バングラデシュの人々が望む品質の服を、貧困層にも購買可能な低価格で販売。利益のすべては同ビジネスに再投資されます。服の企画・生産・販売を通じて、現地の人々自身がビジネスのサイクルをまわし、自らの生活改善や自立を目指しています。

 

ユニクロ「グラミンユニクロ」より

◎企業事例2 【ユニリーバ】石鹸販売でインドの女性の雇用創出「プロジェクト・シャクティ」

食品・家庭用品世界大手ユニリーバのインド子会社ヒンドゥスタン・ユニリーバは、石鹸で手を洗う習慣のなかったインドの農村部において、低所得者でも無理なく購入できる一回使い切りタイプの低価格な石鹸を販売。衛生教育なども行いながら、現地の衛生意識向上と衛生環境の改善を図りました。

 

単に石鹸を売るだけでなく、その訪問販売員として農村部の貧しい女性を職業訓練して雇用し、彼女たちの所得の向上にもつなげています。2000年代から始まったこの活動は「プロジェクト・シャクティ」と呼ばれ、ビジネスの力で社会課題を解決した世界的に有名な成功事例となっています。

 

日本ユニリーバ「地球と社会」より

◎企業事例3 【ジモティー】貧困に陥りやすい「ひとり親」を支援するキャンペーンの実施

地域情報サイト「ジモティー」の企画・開発・運営を展開するジモティーでは、2018年からひとり親への支援活動として「ひとり親応援キャンペーン」を実施。企業からの支援物品をジモティーのサイト上に掲載し、ひとり親家庭を優先して受け渡し会を行っています。

 

ジモティーでは「必要なものを必要な人へ」譲り合う仕組みを提供。ユーザー調査の結果、貧困に陥りやすいとされるひとり親の約65万世帯がサービスを利用していることが判明したと発表しました。これは日本のひとり親世帯の約半数にあたる数字であり、ユーザー層とサービスの相性もマッチした取り組みと言えるでしょう。

 

ジモティー「SDGsに関する取り組みについて」より

YouTubeチャンネル「SDGs Biz」にて、SDGsとビジネスの関係を動画で解説

揚羽では、SDGsとビジネスの関係をテーマにしたYouTubeチャンネル「SDGs Biz(エスディージーズビズ)」を運営しています。SDGsとビジネスをつなげるために役立つ、生きた情報を発信しています。

 

今回取り上げた目標1「貧困をなくそう」についても、ここに紹介した事例とは別のビジネスを取り上げて詳しく解説しています。ビジネスでこの目標に向き合い、達成するためのヒントとしてぜひご活用ください。

 

 

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