「採用ブランディング」とは、経営ビジョンの達成に寄与する人材採用のための取り組みです。自社ならではの価値や魅力を発信し、求職者から共感を得てファンになってもらうためのコミュニケーション活動ともいえます。採用ブランディングはステップに沿って進めることで、本来の効果が発揮できます。本記事では、採用ブランディングの基本的な進め方を成功事例や注意点とあわせて解説します。

採用ブランディングとは何か

当社では、採用ブランディングを「経営ビジョンとそれを実現し得る人物を“共感”でつなぐ活動」と定義しています。企業の成長・発展には、経営ビジョンの実現が不可欠です。経営ビジョンを実現し得る人材の獲得が、最終的に企業の成長・発展につながります。

そもそも経営ビジョンとは、企業のミッション・ビジョン・バリューや企業が目指す理想像、それを達成するための方針や目標を明文化したものです。求める人材にそれらを伝え、共感を得るための戦略的なコミュニケーション活動が採用ブランディングといえます。また、採用ブランディングは、自社で働く魅力やメリットも伝え、自社の「ファン」を増やしていく活動でもあります。

採用ブランディングの進め方

採用ブランディングは、基本的に下記の4ステップで進めていきます。

  • STEP1:調査・分析
  • STEP2:採用ブランドコンセプトの導出
  • STEP3:コミュニケーション計画立案
  • STEP4:クリエイティブ施策

STEP1:調査・分析

まずは、自社の採用ブランドの価値を形成するための調査・分析を実施します。自社ならではのコンセプトが抽出できるよう、イメージ調査や取材調査を行います。また、「3C分析」や「5つの軸」から自社の魅力を整理します。

3C分析のための要素収集

自社の魅力の再整理

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STEP2:採用ブランドコンセプトの導出

次に、調査・分析から見えた「自社ならでは」の価値を採用ブランドコンセプトとして導出します。採用ブランドコンセプトは、採用ブランディングを行う上での指針となるものです。採用ブランディングの第一歩であり、最も重要なステップともいえます。採用ブランドコンセプトは、ターゲットが求め、かつ競合にはない自社独自の魅力であることがポイントです。

コンセプトが導出できれば、採用担当者や採用に携わる社員が自社の魅力や求職者に伝えるべきメッセージについて共通認識を持てるようになり、採用活動を通して一貫したメッセージを発信できるようになります。

STEP3:コミュニケーション計画立案

次に行うのが、コミュニケーション計画の立案です。求職者にどのタイミングで、どのような魅力を訴求していくかを設計します。コミュニケーション計画がないまま具体的な施策を実施してしまうと、魅力が思うように伝わらなくなってしまう恐れがあります。自社の魅力を十分に理解してもらい、共感を得るには、求職者に対して必要なタイミングで適切な情報を発信することが重要です。

採用広報戦略立案

STEP4:クリエイティブ施策

コミュニケーション計画に基づき、必要なクリエイティブ施策を実行します。必要になるクリエイティブは、コミュニケーション計画によってさまざまです。代表的なクリエイティブとして、下記が挙げられます。

クリエイティブ

特徴

採用サイト ・求職者が求める情報発信に特化

・応募フォームも設置することで、情報収集から応募までのプロセスを集約できる

採用動画 ・企業説明会や合同説明会で活用

・短時間で多くの情報発信が可能

・自社の雰囲気やリアルなイメージを伝達できる

・採用サイトに組み込むことも可能

採用パンフレット ・必要情報を冊子にまとめており、効率的な情報収集が可能

・企業説明会や合同説明会など、オフラインでの採用活動にて活用

・形に残るためリマインド効果あり

採用ブランディングの成功事例

採用ブランディングの進め方は、企業が持つ課題や採用目標によってさまざまです。今回は当社の支援実績から、多様な人材を確保するため、自社の魅力を正しく伝えることを目指した事例で、採用ブランディングの進め方をみていきます。

採用ブランディングの背景

ガラスや電子、セラミックなどさまざまな分野の「素材の会社」として知られるAGC株式会社。多くの製品でトップシェアを誇ることから、学生や求職者からの知名度は高く、プレエントリー数に大きな課題感はありませんでした。

しかし、内定承諾のフェーズにおいて、技術系職の採用では大手同業他社と、事務系職の採用では他業界含む大手グローバル企業とバッティングする傾向にあったといいます。

新たな価値創造に挑戦し続けるためにも多様な人材を確保すべく、「AGCだから入社する」という最後の決め手となるような、訴求力を高めるための採用ブランディングを支援。2022年より「AGC採用施策リニューアルプロジェクト」がスタートしました。

調査・分析~戦略策定

まずは、当社の採用ブランディング効果測定サービス「ビズミルサーベイ」を活用し、「学生の志向性及び企業イメージの大規模調査」(定量調査)を実施。同社が実施した「内定者および辞退者アンケート」(定性調査)をあわせ、競合他社と比較した採用ブランドの強み・弱みを可視化しました。

調査・分析の結果、選考の後期になると学生は同社に対して「意欲高く働く社員が多い」「挑戦を後押しする組織風土」など、社員活躍や社風に関する印象をもつ割合が高くなっていることがわかりました。その点をふまえ、他社との差別化要素として「大きな裁量権」を抽出しています。

そして、同社の強み、他社との差別化要素をふまえて採用コンセプトコピーを策定。100年以上の長い歴史の中で挑戦を重んじ、社会の発展と暮らしに寄り添い続けてきた同社だからこそいえる、「Your Dreams, Our Challenge その挑戦は、未来を加速させる」に決定しました。

「Your Dreams, Our Challenge」は、同社のブランドステートメントです。これを採用視点で再解釈し、「やりたいことに挑戦できる環境」=「自己成長・企業成長への期待」を求職者に向けたブランドの軸として、採用ブランディングの戦略を策定していきました。

クリエイティブ施策

クリエイティブ施策として、新卒採用サイト、キャリア・第二新卒採用サイト、新卒採用パンフレット、2種の採用映像を制作しています。

【新卒採用サイト/キャリア・第二新卒採用サイト】
採用サイトは、挑戦によって未来を切り拓く勢いや前進するイメージを表現しました。挑戦の歴史や戦略事業の全容、時代の先端をいくチャレンジングなプロジェクトのストーリーをキーコンテンツとし、裁量権を持って挑戦できる風土が伝えられる内容です。

【新卒採用パンフレット】
「いまAGCが最も挑戦していること」をテーマとした特集を掲載。パンフレットの表紙には、同社のガラスや素材の世界観を表現するため、クリアフィルムを使用しています。コンテンツだけでなく、視覚・触覚からも同社をイメージできるようこだわりました。

【採用映像】
・同期座談会映像
職種の異なる5人の同期社員の座談会映像を制作。それぞれが違う道でどのような挑戦をしてきたのか、実体験に基づき挑戦できる環境であることを証言する内容としています。異なる職種のメンバーを集めたことで、幅広い求職者を対象に映像が活用できます。

・仕事密着映像
職種の異なる2人の社員、それぞれの1日に密着した映像です。日々、業務の中でどのような挑戦をしているのか、インタビューコメントよりそれぞれの想いを伝える内容となっています。1日のスケジュールに密着することで、日常的に挑戦できる環境である点を訴求しています。

AGC株式会社の採用ブランディング支援実績はこちら

採用ブランディングにおける注意点

採用ブランディングを実施する上では、以下のポイントで注意が必要です。

  • 人事部以外の協力が必要
  • 効果が出るまで時間がかかる
  • 自社を良く見せすぎない

採用ブランディングを成功させるためにも、あらかじめ注意点を押さえておきましょう。

人事部以外の協力が必要

採用ブランディングは全社的に取り組むべき施策です。なぜなら、実際に働く社員と求職者に発信される情報に乖離があると、入社後にギャップが生じてしまう可能性があるからです。入社後のギャップは、内定辞退や入社後の早期離職につながる恐れがあります。

求職者に発信する情報やメッセージに一貫性を持たせるためにも、社内でブランド価値の認識を統一することが必要です。そのためにも、採用ブランディングは人事部だけで進めず、新卒・第二新卒・キャリア採用に関わる部署をはじめ社内全体で協力して進めていきましょう。

効果が出るまで時間がかかる

採用ブランディングは、実施してすぐに効果が出る施策ではありません。なぜなら、採用ブランドを確立してから浸透し、応募増加につながるまでのプロセスには時間がかかるからです。一般的には、効果が出るまで数か月から数年かかることもあります。

効果が出るまではPDCAサイクルを回し続け、継続的に情報発信していく必要があります。長期的な取り組みになることを踏まえ、すぐに成果が出ないからと焦ることなく、じっくりと就職・転職市場に自社のブランド価値を浸透させていくことが大切です。

自社を良く見せすぎない

自社の良い面ばかりを訴求しないよう注意しましょう。自社を良く見せるために誇張したり、美化させすぎると、入社後のミスマッチが生じる原因にもなってしまいます。

良い面だけの情報発信によって、目標の応募や採用人数を達成できたとしても、本当の意味でマッチした人材が確保できたとはいえません。採用ブランディングにおいて重要なのは、入社後に経営ビジョンを実現し得る人材を確保することです。自社に対して真の共感を獲得できるよう、企業がもともと持っている魅力や価値を正しく伝えることが大切です。

まとめ

採用ブランディングは「調査・分析→採用ブランドコンセプトの導出→コミュニケーション計画の立案→クリエイティブ施策」という順番で進めていきます。

なかでも、採用ブランディングの核となる採用ブランドコンセプトの導出は、重要なステップです。自社ならではの魅力を確立し、必要なタイミングで適切に発信できてこそ、採用ブランディングの効果が高まります。そのためには、緻密な調査・分析や戦略策定、クオリティの高いクリエイティブ制作も重要です。

揚羽では、採用活動から内定後のフォローまで採用全体のブランディング支援を行っています。採用ブランドコンセプトの導出から戦略の策定、クリエイティブ施策まで一貫した支援が可能です。採用ブランディングに取り組みたいが、何から始めたら良いかわからないという方は、お気軽にご相談ください。