近年、労働人口の減少により採用の難易度が上がりつつあり、内定を出しても辞退されてしまったり、入社後に早期離職に繋がってしまう企業が増加傾向にあります。
内定辞退や入社後の早期離職を防止する策として、内定者フォローが有効ですが、本記事では効果的な内定者フォロー事例をご紹介します。

内定者フォローの意味と目的

新卒・中途採用の目的は人材の採用ですが、内定を出し、承諾を受けて終わりではありません。内定承諾から入社までは一定期間が空き、新卒採用ではその期間も半年以上と長期化します。

入社までの間に何らかの理由で内定を辞退してしまったり、入社までのモチベーションが下がったりしてしまうケースも珍しくありません。そんな時に必要な施策が、内定者フォローです。まずは内定者フォローとその目的についてみていきます。

内定者フォローとは

内定者フォローとは、企業が内定者をサポートするための施策のことです。採用活動のプロセスであり、内定後〜入社までのフェーズで実施します。

内定者の中には「入社後に職場に馴染めるか」「業務をしっかりこなせるか」「同期とうまくやっていけるか」など、さまざまな不安を抱えている人もいます。

内定者フォローは、そうした不安や入社にあたっての疑問を解消し、企業への理解を深めてもらう施策です。内定者がモチベーション高く、期待を持って入社できるようサポートしていきます。

内定者フォローの目的

内定者フォローの目的は、「内定辞退」と「入社後の早期離職」の防止です。採用には、多くのコストや時間がかかっています。内定辞退が起こることで採用計画が崩れて人員計画の再考が必要になる場合があり、早期離職は教育コストまでが無駄になってしまいます。

株式会社ディスコによる「2024年卒採用内定動向調査」によると、2024年卒の採用で内定辞退が増えた企業は減った企業の2倍近くに上り、3社に1社は内定辞退が増加している状況にあります。内定承諾後も選考を続けていることが一般的になりつつあるほか、内定後の企業からのフォローに不足を感じていることも内定辞退の理由に挙がっています。

内定者フォローによって入社まで継続的な接点を持ち、入社へのモチベーションを高めたり、入社前に自社の理解を深めることで入社後のギャップを埋めることは、内定辞退や入社後の早期離職の防止に有効です。

内定者フォロー事例10選

内定者フォローとして実施できる施策は、下記のようにさまざまです。

  1. 内定者懇親会
  2. 人事・現場社員面談
  3. 集合型研修・グループワーク
  4. オフィスや工場などの現場見学
  5. 内定者インターン・アルバイト
  6. eラーニングなどの学習コンテンツ
  7. 社内報の送付
  8. 内定者だけに見せる映像
  9. 内定者による特設サイト制作
  10. オンラインボードゲーム

ここでは、さまざまな内定者フォロー事例をご紹介します。

1. 内定者懇親会

内定者懇親会は、内定者同士や内定者と先輩社員、人事担当者などの社員との親睦を深めることを目的に開催するイベントです。交流を深めるだけでなく、自社の雰囲気を事前に知れたり、先輩社員からリアルな話を聞けることで、理解も深められます。

下記は、内定者懇親会の主なプログラム例です。

  • 食事会
  • 内定者同士の自己紹介
  • 先輩社員との交流
  • グループワーク(チームビルディングを目的とした簡単なゲームなど)
  • 職場見学
  • 質疑応答
  • 記念品の配布 など

遠方に住む内定者の参加が難しい場合には、オンライン参加も可能にすることで画面越しに当日の様子を伝えられます。

2. 人事・現場社員面談

内定者と人事、現場社員が一対一で行う面談です。内定者が抱える不安や疑問を丁寧にヒアリングすることで入社にあたっての不安を解消しつつ、良い関係を構築していけます。

入社後のギャップ解消のためには、ポジティブなことだけでなくネガティブな情報もしっかり伝えることがポイントです。

入社までの期間が長い場合は、時期に応じて複数回実施することで、その時その時の不安や疑問点を都度解消していけるでしょう。
ただし、新卒の内定者フォロー段階での面談は、学生とある程度信頼関係が構築できてから実施することが必要です。内定者が秘めている感情を聞き出し、不安に対して的確にフォローするためには、信頼関係のもとオープンに話せる関係性であることが重要です。

3. 集合型研修・グループワーク

集合型研修やグループワークといった「内定者研修」は、内定者同士のチームワーク醸成や社会人としての意識づけ、自社の理解を深めるなど、さまざまな目的にあわせて実施できる施策です。オンライン受講ができる研修であれば、遠方にいる内定者にも平等にフォローが行えます。

入社後の業務への不安を解消したり、学生から社会人への意識づけには、集合型研修が活用できます。ビジネスマナー研修やチームビルディング研修などがその一例です。研修は、社内で実施するほか、外部の研修・セミナーを活用するのも良いでしょう。自社の企業理念など、カルチャー面への理解を促したい場合には、自社での実施が有効です。

そして、グループワークは内定者同士のチームワーク醸成に役立ちます。内定者同士だけでなく、年齢の近い先輩社員ともグループワークを行うことで、入社への不安解消にもつながるでしょう。

4. オフィスや工場などの現場見学

入社後、どのような場所・雰囲気の中で働くのかは内定者も気になるポイントの一つ。そうしたニーズに対応できる内定者フォローが、オフィスや工場などの現場見学です。

自分が今後働く現場を見て、現場の社員と話す機会があれば、不安解消や入社意欲の向上、ミスマッチ防止にも役立ちます。現場の社員への質疑応答や、一緒に簡単な作業を行う時間を設けるのもおすすめです。

5. 内定者インターン・アルバイト

内定後、入社までの間にインターン・アルバイトとして内定先で実際に働く取り組みです。

実際に働く中で自社の雰囲気や業務内容が理解でき、入社後の業務への不安解消やミスマッチ防止に有効です。企業としても早い段階から教育できるため、入社後の即戦力化に期待できるメリットがあります。

内定者インターン・アルバイトは強制するものではなく、あくまで内定者の意思で取り組むかを判断してもらうものです。学生の内定者の場合は、学業に支障が出ないよう、柔軟な労働条件を設定することが大切です。

6. eラーニングなどの学習コンテンツ

内定者フォローツールとして、eラーニングなどの学習コンテンツを提供するのも良いでしょう。入社前に学習できることで、内定者は業務への不安を解消できたり、企業側も内定者の早期育成ができたりと、双方にメリットがあります。

内定者が遠方に住んでいる場合は、会社に集合しての研修が難しい場合もあるでしょう。eラーニングならオンラインで受講できるため、時間・場所を問わずに内定者のペースで取り組めます。

また、eラーニングシステムによってはSNS機能が備わっているものもあり、内定者同士のコミュニケーション活性化や人事との継続的な接点確保に役立ちます。

7. 社内報の送付

社内報は、社内の雰囲気を知るために役立つツールです。内定者に企業のリアルな雰囲気や取り組みを伝えることができ、企業に対する理解を深めてもらいやすくなります。

ただし、事務的に社内報を送るだけでは、読んでもらえない可能性があります。社内報に内定者向けのコンテンツを盛り込んだり、内定者の不安や疑問の解消につながる情報をピックアップしたりと、内定者に知ってほしい情報がしっかりと伝達できるようコンテンツや資料を厳選するなどして工夫することが必要です。

企業によっては、インターンやアルバイトに参加している内定者や新入社員に社内報を作成してもらい、より身近に感じられるコンテンツになるよう工夫しているところもあります。また、社内報とあわせて社史やPR誌、内定者の希望職種に関連する資料やデータを送付するのもおすすめです。

ここからは、揚羽の支援実績より、制作物を活用した事例から内定者フォローの施策をご紹介します。

8. 内定者だけに見せる映像

社員食堂や給食事業委託を展開するエームサービス株式会社の内定者フォローツールとして、パラパラ漫画ムービーを制作。「友達の食生活につい口を出してしまう」「空になったお皿を眺めるのが好き」など栄養士の共感を呼ぶエピソードを温かな絵柄で表現しています。

就職活動では内定をもらうことに集中し、なぜその仕事を選んだのかという初心を忘れてしまうこともあるでしょう。内定後に今一度、栄養士を志したときの気持ちを呼び起こし、内定という一つのゴールを通過した先に進む学生の背中を押すフォロームービーとして活用されました。

エームサービス株式会社の内定者フォロー 支援実績はこちら

9. 内定者による特設サイト制作

日清食品株式会社では、内定者フォローとして内定者たちで特設サイトを制作する企画を実施しました。

1泊2日で実施した内定者合宿でのワークを通して「就活生がこの時期にどんな疑問を思うか」「なぜ自分たちがこの会社を選んだのか」など、自身の就職活動や内定承諾した理由を振り返り、採用サイトのアイデアを出していきました。

その上でコンテンツの中身やデザイン案も学生たちが考え、それらを最大限活かした採用サイトを制作。アイデア出しのワークを通して内定者同士の交流を深めるほか、みんなで一つのものを作り上げる体験からチームワークの醸成にもつながりました。

日清食品株式会社様の内定者フォロー 支援実績はこちら

10. オンラインボードゲーム

ある不動産会社様の内定者フォローでは、すごろく型のワークを実施しました。

入社後の実際の業務では、トラブルが起こった際に臨機応変な対応力が求められます。本ワークでは内定者が新入社員になりきり、仕事の奥深さや知識を深めながら、さまざまなトラブルを乗り越えて一人前を目指す、すごろく型のオンラインボードゲームを使用。PCとスマホのアプリを使ってワークをする形式で、揚羽が企画・制作したものです。

ゲーム感覚で仕事の追体験や知識・スキルの理解・習得ができ、ゲーム終了後はゲーム内の回答を全体で振り返り、学びを共有できました。業務に関する内定者研修はつい堅くなりがちですが、ゲーム型にすることで楽しくカジュアルに学べた事例です。

内定者辞退防止のポイント

内定者フォローは内定辞退防止策の一つであり、内定者フォローを行ったからといって必ずしも内定辞退を防止できるとは限りません。
ここでは、内定者フォローとあわせて押さえておきたい、内定者辞退防止のポイントをお伝えします。

期待値を調整する

企業説明会やインターンシップ、選考など採用活動の各プロセスで学生や求職者に対して良い印象を与えることは重要です。しかし、良い印象を与え、入社への期待値を高めることだけに意識しすぎるあまり、実態にともわない誇張した訴求をしないよう注意しましょう。

採用活動の段階で得た印象と内定後、入社後のギャップが大きくなってしまっては、内定辞退や入社後の早期離職を促してしまう恐れがあります。最初のタッチポイントから内定後、そして入社後まで同じレベルの期待値となるよう、各採用プロセスでは実態に即した訴求を心がけることがポイントです。

「内定出し」を疎かにしない

内定出しを事務的に行わないこともポイントの一つです。一般的には電話やメール、書類送付をもって内定を通知することが多いでしょう。しかし、こうした方法では企業からの期待や熱量が伝わりにくい可能性があります。

「あなたを採用できて嬉しい」「一緒に働けることを楽しみにしている」といった企業側のポジティブな感情を伝えるため、印象に残る内定出しを行うこともおすすめです。会社に足を運んでもらい社長直々に内定を通知する、社員も集まった歓迎ムードの中で内定出ししたりと、印象に残る内定出しを検討してみましょう。

内定承諾後も定期的に接点を持ち連絡を取る

内定承諾後、入社まで何の音沙汰もない、あるいは業務連絡だけでは入社へのモチベーションが低下したり、不満や不安が募ってしまう恐れがあります。内定承諾後は定期的に連絡を取るだけでなく、内定式や内定者懇親会、研修や現場見学などの内定者フォローを実施し、継続的に関係を構築していくことが大切です。

内定者フォローの機会があれば内定者の不安やニーズに直接アプローチできるほか、内定者同士が交流を深めたりと、入社に向けてモチベーションを高めていけるでしょう。

まとめ

内定者フォローは内定辞退を防ぐだけでなく、入社後の早期離職の対策にも役立ちます。内定者フォローにはさまざまな事例があるため、目的にあわせて施策を選ぶことがポイントです。内定を出し、承諾から入社まで採用活動は続いていると意識し、適切な内定者フォローを行いましょう。

揚羽では内定者フォローの支援も行っています。採用活動から内定後のフォローまで採用全体のブランディング支援が可能ですので、お気軽にご相談ください。

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