はじめに

猫

こんにちは。猫好きなデザイナー&マネージャーのにしです。

 

デザイナーとして日々仕事をこなす中で、時折「センスがある/ない」といった会話を聞くことがあります。非デザイン系の学校を卒業した自分は、センスってなんだろう?それって備わってるものなの?それとも後天的なもの?などとよく考えたりしています。

 

「デザインってなんだろう」
「デザインで伝えるってなんだろう」

 

ともすると、なにを考えてるか分からない“ちょっと不思議な集団”に見えちゃう時もあるデザイナーという職業。今回はそんなデザイナーの頭の中身を、揚羽制作部のマネージャーとして、一人のデザイナーとして解き明かそうと思います!
デザイナーとして学びの一端になればと思います。そしてこれを読めば、あなたもデザイナーの一員になれる…かも?!:)

 

デザインの社会にもたらす役割を考えてみる

突然ですが、僕がデザインに対して思っていることで、時折口にしている言葉が一つあります。

 

「デザインは非言語(ノンバーバル)のコミュニケーションだ!」

 

デザインは言葉を使わずに意思を伝えるものだ、という意味ですが、デザインの役割はこの言葉に集約されていると、僕は思っています。最高のコピーとは「営業マンがいなくても勝手に売れてくれるコピーだ」と、有名なコピーライターがおっしゃっていました。これってデザインでも同じことが言えると思ったんです。デザインは言葉だけでなくビジュアルで人々を納得させられるものであり、時に言語を超える力を持つ非言語(ノンバーバル)コミュニケーションです。デザインは社会に必要なものであり、さまざまな人に伝わりやすい形で情報を伝えるという大切な役割を担っているのです。

 

例えばピクトグラムやアイコン。これは、言葉で説明をしなくても情報が伝わるよう絵で表現した視覚的な記号です。重要な部分に「!」とマークをつけるだけでその箇所のテキストの内容を見る人間に重要な部分を知らせることができますよね!他にも、バラバラに配置されたイラストに数字を順番に配置すれば、どのような順番で理解していけばいいのか伝えることもできます。また私たちに身近な広告においても、非言語=ノンバーバルなデザインの考え方が、重要な成功のファクターとして考えられています。

 

例1) トイレのピクトグラムデザイン
デザインが非言語である簡単な例として、まずトイレを例にして考えてみましょう。

 

ピクトグラム トイレ マーク

 

マークとして男女のカタチがこれでいいのか、という議論は考えなければならない側面もありますが、まずはトイレに行きたかった人は、このピクトグラムを見つけてきっとほっとするはずですね(笑)。もしこれが「トイレ」とカタカナだけだった場合、他の言語をいくつも用意せねばさまざまな人には伝わらず、非常に煩雑な看板が生まれることでしょう。

 

話は横にずれますが、この男女のピクトグラムに「トイレ」という意味付けがされたのは、一説によると東京オリンピックだったそう。1964年当時の日本では和式トイレが主流であり、便器のアイコンを使っても海外の方には何も伝わらないものとなってしまう…ということで考案されたのが、この男女のアイコンだったのですね。男女のマーク自体は既に昔から開発されているものの、その男女のイラストを使ってトイレのサインにした事例はそれまでなかったのです。詳しい説明は下記アドレスに!非常に面白いお話が載っています。

 

参考:TABIZINE「世界中に広まる男女が並ぶトイレマークは、日本で生まれたって本当?【日本の不思議】」

 

1964年の東京オリンピックでは現在より言語の壁も大きく、外国からの旅行者のほとんどは、初めて訪れる日本の文字を理解することができません。そんな外国からの来訪者をもてなす一環として、日本のデザイナーチームによって考案されたのが、「トイレ」や「非常口」といった案内表示に使う“ピクトグラム”アイコンのデザインだったのですね。1964年のピクトグラムに関しては、オリンピックの公式サイトに載っています。

 

参考:オリンピック公式サイト「Developing a new global visual communication language」(公開終了)

 

そして新しい東京オリンピック2020では、パフォーマンスとして「動くピクトグラム」が披露され、話題になりましたね!ママリンピックなどのパロディがSNSで広まり、世間から共感され賑わいました。

 

ピクトグラムは、「言語」を使わずに、むしろ言葉よりも意味や意思が伝わる、素晴らしいデザインの一つです。

 

例2) 広告から視るデザイン
デザインが非言語で伝わる簡単な例として、次に広告における例を挙げてみましょう。

 

LEGO

 

Ads of the World「Lego Campaign by Blattner Brunner – 06/2006」(2006年)より引用

 

LEGOのノンバーバルデザイン手法を使ったこの広告。ただのブロック玩具を超えて、組み立てて形を作り出すことでどんなものにでもなるという子供の想像力を最大限引き出すことを数個のLEGOブロックと影だけで表現しています。まさに、レゴの「子供の創造性をサポートする」、というブランドコンセプトをミニマムに表現したもので、子供だけでなく大人も昔を思い出してワクワクするような、言葉で表現することのできない鮮烈さがあります。

 

もう一つ、言葉と掛け合わせた表現も見てみましょう。

 

McDonald's

 

Creative Criminals「McDonald’s: Open at night」(2012年)より引用

 

これは、マクドナルドが夜間営業を新しく行うことを周知するためのビルボード広告です。同社のロゴマーク(通称:ゴールデンアーチ)を暗くなる夜にだけ見える手法でデザインし、「Open at night」というメッセージを2つのライトだけで見事に表現しています。ただ看板に「夜もお店が開いています」と書いてあったとしても、ほとんどの人の記憶には残らないでしょう。ただ、その文字の上に、暗くなってライトがついて、それがマクドナルドのロゴになっていたら、きっとちょっとした驚きとライトがつく安心感と、いろいろな引っ掛かりで記憶に残る人は多いのではないでしょうか?完全なノンバーバルデザインではないかもしれませんが、むしろ言葉よりも伝わるデザインではないでしょうか。

 

デザインを視ることとは〜理解・分解・再構築〜

第一章ではデザインが非言語ノンバーバルなコミュニケーションとして、社会で重要な役割を担っていることを伝えました。第二章ではデザインはどのように行うのかを言語化してみます。

 

デザインとは
認識し言語化する =「理解」
要素を一般化する =「分解」
組み合わせて再現する =「再構築」

 

の工程を踏んで行われていくのだと考えています。(某 錬金術師の漫画に出る言葉と同じで考えてみました笑)それぞれ3つの観点を具体的に説明していきます。

 

認識し言語化する=デザインを「理解」する

まずデザインを行う際に最初に必要になるスキルが「理解」のフェーズです。これは「何が」いいのかをきちんと言語化できるスキルといえるでしょう。

 

まずは自分がデザインを見てみてどう思ったか、そしてデザインがどういう構成要素でできているかをいろいろな角度で分析し言語化していきます。

 

・レイアウト
「黄金比が使われているか、他の考え方が使われていないか?」
「視点の流れはどうなっているか」
「余白の使い方はどうなっているか」
「グリッドデザインなのか?グリッドから外れているのはどういうものか」
・色
「メインの色はあるか、またはメイン色の面積はどれくらいか」
「複数のカラーを使っている場合のトーンはどうなっているか」
「寒色系か暖色系か」
・タイポグラフィと文字組み
「フォントの種類は何か?セリフ?サンセリフ?ウェイトは太い細い?」
「縦組みか横組みか」
「文字は加工されているか」
「ジャンプ率はどれくらいつけているか」
・装飾
「装飾的なあしらいはあるか」
「装飾は文字なのか、罫線なのか、それともパターンなのか」
「装飾によってどういう意味が感じられるか」

 

こういったものを細かく分析することで、デザインのどこがいいかを詳細に理解していくことができます。

 

要素を一般化する=デザインの意味を「分解」する

理解したデザインを、分解して一般化することで、デザインの構成要素がどういう意味で成り立っているのかを知ることができます。デザインの要素を理解した上で分解し一般化することで、その他のデザインにも応用できるようになります。

 

例えば可愛いものをデザインするときはまず、可愛いとは何かを分解します。例えば丸いものであったり淡い色のものは一般的に可愛いを構成する要素と言えるでしょう。これは「人は丸みをおびたものや形がラフなものを未成熟なものと感じ、そして未成熟なものは愛おしい(=可愛らしい)と解釈する」という認知プロセスを利用していますが、形としての丸みという分解されたデザイン要素を利用して、『可愛い』をデザインするのです。

 

デザインイメージ""

 

(ブックマークサイトより。弊社がデザインしたものではありません)

 

組み合わせて再現する=デザインを「再構築」する

理解し分解した時点で、分解したデザイン要素のストック(=デザインの手法)ができていきますね。理解し一般化まで分解した手法を分類してストックしておくことを心がけましょう。そうすればいつでもストックを引き出して再構築できます。ストックされたデザインの手法の引き出しにどんなものがどれだけ入っているかで、その人のデザイン力や幅、そして個性が出てくるのです。

 

例えば「優しさ」を表現するためにAとBとCのストック(分解して獲得したデザインの手法)を組み合わせて使えばいいんだな…と理解できます。

 

もし、一般化したデザイン要素を再構築した際に、元のアイディアのパクリのように見えてしまった場合は、理解・分解・一般化があまいということになりますので、「なぜ似てしまったか」を再考して、もう一度一般化してみてください。このトレーニングの積み重ねが、独創的な引き出しになっていくのです!

 

誰も持っていない自分だけの一般化されたデザインのかけらをたくさん集めてください;)

 

伝わるデザインを伝えるということ

デザインについてデザイナーが考えていることや思考法の一部を解説してきました。伝えるためのさまざまな考え方を学び、伝わる手法を自分を取り巻く全てのモノや事象から理解分解してデザインすることで、言葉を使わずとも言葉以上に伝わるものをつくりあげる…デザイナーの視る方法と実践している考え方の一部をご紹介しました。

 

デザインというノンバーバルなコミュニケーションを使うことで、クライアントの想いや課題をビジュアルできちんと伝わるようにデザインすることがデザイナーの使命であり、それを曲解して伝わるのではなく計画された想定で“伝える”ことが重要です。(目的によっては驚きやアメイジングに伝えることも必要ですがそれも計画通りにやることが必要ですね!)

 

ただデザインをデザイナー以外に説明するためには、ノンバーバルなコミュニケーションを言語化しなければならず、2言語を操るような大変さがあります。揚羽ではデザインを言語化されたコンセプトに落とし込んだり、資料化・言語化することを心がけています。デザインをきちんと言語化してほしいなどクリエイティブにも納得感を持って伴走いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください;)

 

最後に一言…

 

デザインとは

 

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