理念浸透の促進に有効な手法の1つにワークショップがあります。ワークショップは参加者が主体的に取り組めるプログラムが有効であり、理念への理解を深める効果に期待できます。

今回は理念浸透を促すワークショップの種類や具体例、ワークショップ実施時のポイントなどをご紹介します。

理念浸透を促すワークショップとは?

理念浸透を促すワークショップとは、グループワークを通して理念について思考・体感してもらうことです。そもそも、ワークショップとは参加者が主体性を持って参加するイベントのことです。ただ体系的に学ぶだけでなく、他の参加者の意見を聞いたり、ゲームなどを通して体感することで理解を深めることができます。

一方セミナーは、登壇者や主催者が参加者に対して一方向に伝える形式ですが、ワークショップは登壇者や主催者、参加者が双方向な形式である点が特徴です。単に理念の重要性を学ぶだけではなく、すでにある自社の理念の理解を深めるためにもワークショップが役立ちます。

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理念浸透を促すワークショップの種類

ひとくちに理念浸透を促すワークショップといっても、理念浸透のどこに重点を置くか、何を目的にするかによって実施するワークショップの種類は変わってきます。

揚羽が過去に実施したワークショップをもとに、理念浸透を促す4種類のワークショップをご紹介します。

言葉づくり

理念浸透における言葉づくりとは、浸透させる理念を形にすることです。当社では、言葉づくりのワークショップとして、以下4種類のワークショップを実施してきました。

言葉づくり_ワークショップ一覧

ワークショップは必ずしも全社員を対象に実施するとは限りません。内容に応じて適切な対象者を選ぶこともワークショップ開催のポイントの1つです。

計画策定

計画策定のワークショップは、実際に社内でどう理念を浸透させていくかを検討することが目的です。当社では、計画策定のワークショップとして「理念浸透を検討するためのワークショップ」を実施しました。

計画策定_ワークショップ一覧

理念浸透施策にはさまざまな種類があり、一概に「これが正解」と言い切ることが難しいです。事例は浸透施策を検討するアイデア・ヒントとして役立つものであり、さまざまな事例を学ぶことで自社に適した浸透施策がみえてきます。

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浸透活動

浸透活動は、理念を実際に浸透させるワークショップです。すでにある理念、再定義した理念を社員に伝えることを目的に実施します。当社では、浸透活動のワークショップとして3種類のワークショップを実施しました。

浸透活動_ワークショップ一覧

浸透活動のワークショップは、対象者によって内容を変えていくことがポイントです。

たとえば、管理職層は企業の理念を現場レベルに落とし込む役割を持つことから、部下に伝える手段を検討するワークショップを実施しています。また、まだ自社の理念について認知する段階にある若手従業員や内定者のワークショップは、コンテンツ制作を通して認知を促すことが可能です。

従業員の役職レベルや在籍年数によって浸透活動における役割や理念の浸透度が異なるため、目的を明確にした上で適切なワークショップを実施することが大切です。

相互理解

理念浸透の最終ステップが相互理解です。浸透した理念を相互理解できてこそ、社内で理念が浸透している状態といえます。

当社では、相互理解のワークショップとして「仕事の意義とエピソードを掘り出すワークショップ」を実施しました。

相互理解_ワークショップ一覧

組織にはさまざまな部署があり、従業員それぞれの役割も異なります。しかし、同じ組織に属するということは、皆が同じ理念やビジョンを目指してそれぞれの役割を発揮することが求められます。部署を超えて、理念を体現するためにどう行動したかを振り返り、共有することで相互理解が深まり、より理念の浸透が促されます。

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理念浸透を促すワークショップを実施する際のポイント

理念浸透を促すワークショップは理念浸透施策として有効な手段ですが、ポイントを押さえないと失敗に終わってしまう恐れがあります。ワークショップは日々の業務の合間をぬって実施することからも、従業員にとって有意義な時間になり、かつ理念浸透に効果をもたらす必要があります。

ここでは、理念浸透を促すワークショップを実施する際のポイントを解説します。

いきなり全社員を対象にしない

ワークショップによって対象となる従業員は異なります。なかには全従業員を対象とするワークショップもありますが、多くは役職レベルや在籍年数に応じて分類されます。

また、理念浸透度や理念浸透へのモチベーションも従業員によってさまざまです。そのため、まずは自社の理念浸透の状況を把握する必要があります。自社全体での理念浸透レベルや従業員ごとの浸透度を調査することで、誰に対してどのようなワークショップを実施すべきかの基準が明確になります。

そして、すでに理念浸透に取り組んでいる人、理念浸透に関心・モチベーションを持っている人にフォーカスすることもポイントです。理念浸透に取り組みたい人にフォーカスすることでほかの従業員を巻き込みやすくなり、組織全体が理念浸透に「取り組まなければならない」という雰囲気・意識づくりが促されます。

参加社員からアンバサダーを選出する

アンバサダーとは、組織の「宣伝大使」です。理念浸透プロジェクトや研修に参加しているアンバサダーは前向きでポジティブな感情を抱いています。アンバサダーの活動が理念浸透に大きく貢献する可能性が高く、浸透を加速させるキーパーソンとなります。

経営層からの発信だけでは現場レベルにまで理念を浸透させるのは難しいため、当社では旗振り役となる従業員に「アンバサダー」を任命することを推奨しています。アンバサダーがいることで組織の各方面に理念が浸透していくことに期待できます。

このアンバサダーは、理念浸透のワークショップに参加した従業員や理念浸透に意欲的な人を任命することが効果的です。アンバサダーは理念を理解しているため、わかりやすく周りの従業員に理念を伝えるだけでなく、率先して業務内で理念を体現してくれる存在となります。

簡単な前提ルールを設ける

ワークショップを実施するにあたって、簡単な前提ルールを設けることもポイントです。下記は、当社が理念浸透のワークショップで設けたルールの例です。

 

 1.批判をしない
相手の考えや宣言を批判・評価することはNG。誰かが発表した時には、必ず拍手で賞賛を!
 2.自由奔放 思い浮かんだことは躊躇せず発信。
 3.質より量 頭を柔軟に、発散させることを重視。
 4.人のアイデアに
乗っかる
アイデアを連想し、結合して便乗する。

 

参加者に主体的な活動を促すことが、ワークショップのメリットです。批判せず発言に対して拍手で賞賛する、一人ひとりが躊躇せず発信できる環境は心理的安全性も高まり、参加者が主体的に取り組めるようになります。

また、発言に正解を求めることはせず、質より量を意識して発信してもらうこともポイントです。多くの意見・アイデアを吸収することで理解が深まり、新たな視点から理念浸透について考えられるようになります。

どのような雰囲気・環境でワークショップを行いたいか、どういった目的を達成させたいかを軸にルールを決めてみましょう。

ワークショップの過程を記録・保存する

ワークショップによっては、参加人数が限られます。過程を記録することで参加者が学んだことを未参加の従業員に発信できるだけでなく、プロジェクトの真剣さや取り組みの熱意が伝えられます。

社内報や社内SNSでワークショップの様子を発信したり、その効果や参加者の感想などを掲載することも施策として有効です。記録は保存することで理念浸透施策のノウハウとして社内に蓄積され、ワークショップの効果検証や次回の改善点を検討するためにも役立ちます。

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理念浸透ワークショップの具体例

ワークショップの内容は、自社で達成したい理念浸透の目的に合わせて自由に決められます。しかし、テンプレートがないため、いざワークショップを実施するとなると、どのようなワークショップを企画すればいいか迷ってしまう担当者も多いでしょう。

ここでは、実際に当社が実施している理念浸透ワークショップの一部をご紹介します。ワークショップを企画する際のアイデアとして役立ててみてください。

浸透施策を検討するためのワークショップ

理念浸透の基礎知識をインプットし、浸透施策のアイデアを出すワークショップです。このワークショップでは、下記のような内容に取り組みます。

  • 理念浸透の基礎知識をインプット
  • 成功事例のインプット
  • 伝えたいメッセージ(理念)の共有
  • チームでアイデアを検討・発表

なぜ理念浸透には施策が必要なのかをふまえ、施策例や成功事例をインプットした上で各チームで5案ほど施策を出します。各チームの発表を受け、理念浸透のステップ(認知→理解→共感→行動)ごとに施策を整理し、エンプロイージャーニーマップを完成させます。

エンプロイージャーニーマップとは、社員が入社してから退職し、OB・OGになるまでの道のりを可視化したものです。従業員の体験価値の検討・向上に役立てられるフレームワークであり、施策検討に活用できます。

【お役立ち資料】エンプロイージャーニーマップはこちら

理念の自分事化を促すワークショップ

理念を「自分事」として落とし込むことは、日々の業務内で理念を体現するために重要です。当社では、理解と共感の2つのフェーズに分ける形でワークショップを設計しています。

理念の自分事化を促すワークショップ

理念を落とし込むだけでなく、理念浸透において想定される各部門の課題も抽出するなど、今後の浸透活動を検討する材料としても活用できるような内容となっています。

培ってきた強みと未来への思いを抽出するワークショップ

主に経営層や役員を対象に、自社の持つ過去の強みと未来への戦略を自分事として考えてもらうことを目的としたワークショップです。現在から未来へ思考を深め、目指す組織の状態について意見を出していきます。

従業員それぞれが違った姿を描いていては、一貫した理念浸透が困難となります。ワークショップを通して伝えていくべき理念を再確認・再共有し、組織に伝えるべき目指す姿を確立しましょう。

理念浸透はワークショップだけで終わらせない

ワークショップは理念浸透の有効な施策の1つですが、ワークショップだけを実施してすぐに効果を出すことは現実的ではありません。理念浸透には中長期的な取り組みが必要であり、さまざまな施策を相乗効果的に実施していくことが大切です。

企業・従業員によって理念浸透度合いも異なるため、まずは現状の理念浸透度を把握することが理念浸透施策の第一歩です。理念浸透度の把握により、ワークショップで取り組むべき内容も検討しやすくなります。自社の理念浸透における現状や課題、目的に合った効果的なワークショップを企画・実施し、その後もさまざまな施策に取り組みながら理念浸透を目指しましょう。

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