第五回「共創Meetup」を開催いたしました

2024年6月20日(木)に、揚羽主催の交流イベント第五回「共創Meetup」を開催いたしました。

「共創Meetup」とは、サステナブルな未来の実現のため、サステナビリティ経営に取り組む企業が集い、意見を交換し協力し合いながら価値を創出することを目的に立ち上げられたコミュニティです。

今回は、「世界に志と活力の溢れる人・組織を増やす人事の専門家チーム」であり、人的資本経営の実践をサポートする専門家でもあるPeople Trees合同会社 COOの中谷 真紀子氏をお招きし、『人的資本のWhy・How・What』をテーマにトークセッションを実施。トークセッション後には「共創ワーク」も実施し、参加企業の皆さまに各社での取り組みを共有いただきました。

当日の様子をご紹介します。

人的資本経営をブランド価値に昇華させるためのSTEPとは?

はじめに、私、黒田から人的資本をブランド価値へ繋げる方法として「バタフライモデル™」をご紹介しました。

「バタフライモデル™」とは弊社が提唱する、インナー&アウターブランディングを一気通貫で行うブランディングの方法論です。

これまでは「ブランディング」というと、自社の認知を高め、ブランドポジションを獲得し、問い合わせや採用につなげるなど、ビジネスの成長を目的とした「外向き」のアウターブランディングをイメージされることが多くありました。しかし、今回のテーマでもある人的資本経営やサステナビリティ経営の実践により、個と組織の成長を目的とした「内向き」のインナーブランディングも注目され、各社が取り組みを推進しています。

社内外のマルチステークホルダーからの共感を得るためには、企業全体で一貫したメッセージを発信することが欠かせません。構築した理念やパーパスは、まずは社員の皆さまに共感・体現してもらうように働きかけることが重要です。さらに、その社内浸透のプロセス自体を社外にしっかり発信することでインナー・アウターが矛盾しない、言行一致型で一貫したブランドコミュニケーションが実現します。

バタフライモデル

トークセッション「人的資本のWhy・What・How」

次に、中谷氏に『人的資本のWhy・How・What』をテーマに、お話しいただきました。

Why:人的資本経営の目的

中谷氏:
まずは、人的資本経営の目的の目線合わせをさせていただければと思います。

企業価値の中で非財務と言われる「無形資産」が重要と言われますが、改めて無形資産とは何かというと、

  • 「人的資本」と言われる、人のスキル、知識、経験
  • 「社会関係資本」と言われる、個人が持っているネットワーク、お客さまなどとの信頼関係、価値観など

のことを指します。

これらは、目には見えないけれど無限の可能性を持っていて、競争優位性もあり、「無形資産」を高めていくことで企業の勝ち筋が見えると感じています。

そして、世界の無形資産保有企業ランキングを見ると、上位にランクインしている企業はかなり大きなパーパスやミッションを掲げていることがわかります。

無形資産の多い企業

これからの時代はより一層、高いミッションを掲げる企業が社会を動かしていく、または、ビジネスの次なる可能性になっていく、というようになると思います。まさに、人の力や、人の関係性が価値になっているという企業の掲げるミッションは壮大であり、結果的に、世界を動かす大きなビジネスとなっています。

一方、日本社会はどのような状況でしょうか。
各社さまから人手不足という相談をたくさんいただきますが、実は、今はまだ人がいる状態なのです。下図のように、2040年にはこんなにも働き手が不足していくと予想されています。一人ひとりを活かさなければとても立ち行かない状況であり、企業は人をどうマネジメントしていくべきか、本気で考えなければいけないと感じています。

日本の労働力の未来

黒田:
余談ですが、最近アルバイト採用サイトのご依頼が増えています。人手不足が既に表れていると感じます。

中谷氏:
そうですよね。今採用できているという企業さまからも、少しずつ減少の兆しが見えているとお伺いします。エリアによっては、いかに海外の方に日本で働く事を魅力に感じていただくか、ということを考えられている企業さまもいらっしゃいますね。

このような中で、企業と個人の関係性にも変化を感じています。

私が就職活動をしていた頃は、自分自身が社会とつながるためにはどの企業に入ろうか、という気持ちでいましたが、コロナの影響や雇用状況の変化を踏まえて、「個人が企業を介さないと社会と繋がれない」という意識が薄まってきています。副業もできる、趣味にも力をいれたい、という中で、あくまで「企業」は人生におけるひとつの側面だという状態です。

この状況下で、企業が個人の中のマインドシェアをどう獲得していくか。そのためには、給与や仕事内容だけでなく、ブランドのストーリーや理念への共感が重要で、参加したいと思えるパーパスなどの旗印が欠かせません。

企業と個人の関係性の変化

What:自社に必要な人・組織の言語化

中谷氏:
人材確保という面で厳しい時代にも思えますが、給与や企業規模ではなく、ストーリーの打ち出し方次第で勝ち筋が見出せる時代になったということはチャンスと捉えられます。だからこそ、考えるべきは「自社に必要な人・組織とは何か」ということです。他社事例に寄らずに、自社で考えることが重要です。

特に、経営戦略と人事戦略の接続というところで言うと、これまでは経営戦略に基づいて作られるのが人事戦略だったと思います。ですが、「人的資本」の観点と今後の人手不足という状況を考えると、「人がいないのでこの戦略はとれない」という提言や、人・組織のリソースによる戦略の変換、優先順位の転換があるべきだと感じています。経営戦略と人事戦略は同義になると考えています。

How:実現に向けたストーリー設計

中谷氏:
それでは、人的資本経営の実現に向けて何をしているか、ということをある組織の事例を踏まえてご紹介します。

まずは、「何を実現したくて、そのためには何が課題となるのか」を整理する、ストーリーの設計から行います。

ストーリー設計のはじめは、組織の目的の設定です。その上で、目的のために人・組織にどのような課題があり、何を変えていかなければならないかを検討します。

課題を出していくと大体が「人の育成に関わる話」と「環境の話」に分かれることが多いですが、ここは企業・組織によってそれぞれです。さらに、「どこまでを企業・組織で対応し、どこからは個人で実行していくのか」というのも、それぞれのスタンスにより異なります。職種や年次によって違うということもあると思いますので、各社や各組織で独自のストーリーがあると良いかもしれません。

ストーリー設計 人的資本経営

そして、ストーリーと戦略を連動させ、KPIを設定していきます。

ここでよく挙げられるのが、エンゲージメントの話、女性活躍に関する3つの指標などですが、ただ並べるのではなく、全体のストーリーでいうとどこに位置づけられるのか、というところから整理しながら設定することが重要です。

ジェンダーギャップ・管理職比率などを、上の方に持ってくる企業さまもあれば、むしろベースであってそこがなくなるくらいが理想と考えられる企業さまもあります。会社の思想や、何に立脚して取り組んでいきたいかというところから、組み立てていくのが理想です。

人事戦略の柱と施策

上位方針と課題の可視化ができたら、、人材マネジメントとの接続が必要です。

例えば、評価制度が変わる場合、研修チームで実施している研修との接続は十分に行われているでしょうか。評価制度、育成計画、人材開発は社員から見ても、自分のキャリアや成長を後押ししてくれている、もしくは、会社と自分をつなげてくれる大事な機能・制度なのです。

意外と人事組織内では人事制度チーム、育成チーム、などそれぞれで取り組んでいる事が多く、連携が十分になされていないことも多くあります。人事部内のそれぞれのチームを接続させるだけでも、人的資本のストーリーや、会社が社員にどういう状態を求めていきたいのか、が明確になるはずです。

ストーリー設計 評価制度 人材開発

人事部内での連携が十分にできているようであれば、次は社員と適切にコミュニケーションをはかることで、会社が目指す姿勢を丁寧に伝えていく事が重要ではないでしょうか。

もちろん、会社目線でのストーリーを考えることも大切ですが、社員から見たときの「自分自身にとってのメリットが何で、どういう仕組みを通じてどんなキャリアを歩めるのか」というストーリーの設計も欠かせません。

人材育成で言われる「7ー2ー1の法則(ロミンガーの法則)」では、人材の成長は職務経験によるものが7割、他者との対話によるものが2割、自己学習によるものが1割と言われます。つまり、評価チームが担う部分、研修チームが担う部分、事業部のHRが担う部分、現場の上司が担う部分、などそれぞれで連携させる必要があります。

セッションのまとめ

経営戦略と人事戦略をつなげ、自社のストーリーに連動させた指標を設定し、それに基づいた施策をつなげていくことで、企業・組織と個人の関係性が深まり、社員からの信頼や共感を得られやすくなります。
はじめにご説明した「バタフライモデル™」の通り、ブランドのストーリーや理念・パーパスへの共感が得られた状態で、人的資本経営の取り組みのプロセスを社外へ発信することで、インナー・アウターが矛盾しない、言行一致型で一貫したブランドコミュニケーションの実現が可能になります。

共創ワーク

トークセッションの後は、3〜4名ずつ計12チームに分かれ、各社の「人材戦略・重要課題」についてお話しいただきました。

ご参加いただいた方々からは

  • 各社で課題が違う中で、社員の出入りが非常に早くなっていることは共通していた。人を集めるコストがかかっているのが印象的。皆さん、同じような課題で悩んでいると感じた。
  • エンゲージメントサーベイの数字からどういったアクションを起こしていくのか、どう部署を巻き込んでいくか、など他社さんの課題感や対応策を共有することができ有意義な時間になった。

といったご感想をいただきました。

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株式会社揚羽では、サステナブルな社会の実現に向かう企業の差別化を支援する「サステナビリティブランディング」、経営理念やブランド価値を社員が体現できる組織を作り上げる「インナーブランディング」のご支援をしています。

理念浸透につながる組織づくりやインナーブランディング施策の伴走支援もできますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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