周年事業とは、企業の創立や創業の節目に企画・実施する施策のことです。周年事業をうまく活用することで従業員エンゲージメントの向上や組織力の強化、ブランド力の向上といった効果に期待できます。

本記事では周年事業とは何かをふまえ、その目的や進め方、成功事例や成功のポイントをご紹介します。

周年事業とは?

周年事業とは、企業の創業・設立の節目に行う施策のことです。5年ごとや10年ごと、あるいは100年のような大きな節目や企業独自の周期で実施します。

社内向けの周年事業では単なる祝いの場ではなく、企業の歴史を振り返ったり、今後の方針を伝えたりと、企業の未来に向けて士気を上げるために周年事業を活用するケースもみられます。社外向けであれば、ステークホルダーへ感謝の意を表す機会として有効です。

対象者や目的によって、周年事業の内容は多岐にわたります。

周年事業の目的

企業にとって節目のタイミングである周年は「ハレ」の場であり、社内外への絶好のコミュニケーション機会です。単なる祝いの機会とするのではなく、以下のような目的をもって実施することで、企業にとってより意義のあるイベントとなります。

  • 従業員への企業文化や理念の浸透
  • 従業員エンゲージメント向上
  • 商機開発
  • 認知度向上

どのような目的を軸に周年事業を実施するかは、企業が持つ課題によって異なります。周年事業の目的を詳しくみていきましょう。

従業員への企業文化や理念の浸透

周年のタイミングは、過去を振り返ると同時に、次の10年、20年に向かって組織の一体感を強化させる良い機会です。そのため、企業文化や理念の浸透を図るタイミングとしても適しています。

企業文化や理念が浸透しているかは、今後一貫性をもった企業活動を行う上で不可欠です。社内向けの周年事業は企業文化や理念の浸透・再確認に最適なチャンスであり、適切なコミュニケーションができることで未来に向けて士気を高めることもできます。そのため、新たな中期経営計画や定量的なゴールを発表するタイミングとしても最適です。

従業員エンゲージメント向上

組織規模が大きいほど、日常的な業務では社長や経営陣との交流は少ないでしょう。一方、周年事業は全社的に行うものであるため、社長や経営陣との交流の場となり、社長から直接感謝の言葉が受け取れる機会となります。

また、社長自らの言葉で理念や今後の展望を伝えることは、従業員の一体感やチームワークを高める効果があります。帰属意識が高まり、エンゲージメント向上に期待できるでしょう。

商機開発

社外向けには、商機開発を目的に周年事業が実施できます。具体的には、周年事業を通して新企画や新事業戦略を発表したり、新商品・サービスのリリースやキャンペーンを行ったりします。過去に取引があった企業にも情報を発信したり、周年イベントに招待したりするのも良いでしょう。

周年事業を商機開発とするには、自社の従業員だけでなく、取引先や顧客、投資家といったステークホルダーを巻き込むことが必要です。

認知度向上

企業のブランドイメージを統一して全面に出すことにより、周年事業がブランドイメージと認知度の向上につながります。

また、周年を機にリブランディングを実施するのも戦略として有効です。たとえば、従業員やステークホルダーが一気に集まる場で新たなブランド戦略が伝えられることで、リブランディングしたことを認識してもらいやすくなります。

周年事業の進め方

周年事業は、企業にとっても一大イベントです。目的を果たし、周年事業の効果を高めるには計画的に周年事業を進めることが重要です。

周年事業は、基本的に下記のフェーズに沿って進めていきます。

  1. 概念設計フェーズ
  2. 企画・制作フェーズ
  3. 実行フェーズ
  4. 継続展開フェーズ

フェーズごとに周年事業の進め方をみていきましょう。

1.概念設計フェーズ

概念設計フェーズでは、周年事業の前提となるベースを整えます。概念設計は、少なくとも周年イヤーの前年末には終わらせておくことが必要です。

実施すること
  • 事務局(体制)の組成
  • 組織課題の把握
  • 周年事業の目的の明確化
  • ブランド価値の再定義

まずは組織課題を把握し、周年事業の目的を明確化します。また、この段階である程度の予算も決めておきましょう。

次に、社内向け・社外向けそれぞれの施策の前提となる以下ポイントの策定・整理を行っていきます。

社内向け
  • 理念
  • MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定
社外向け
  • ブランド価値の整理

経営課題をふまえ、周年事業の目的となるのは、周年事業を通して社内外に「何を」伝えたいかという部分です。ここが明確になることで「従業員からの信頼・期待」「社外からの信頼・期待」を同時に高められます。

そのためにも、企業や商品の「これまで」と「ありたい姿」を明確にしていくことがポイントです。

企業のこれまで
  • 企業のDNA、自分たちが何者なのかという普遍的な要素
ありたい姿
  • 未来に向けた提供価値

2.企画・制作フェーズ

次に、概念設計に基づき、企画・制作フェーズへと移行します。このフェーズは、周年イヤーの前年です。

実施すること
  • 実施施策の企画〜制作
  • 継続的な情報発信

周年事業の目的やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、ブランド価値に沿って実施する企画を制作します。企画・制作フェーズでは、準備段階でもその情報を積極的かつ継続的に発信することがおすすめです。主な発信場所は社内報や社内イントラ、企業のWebサイトなど。継続的な情報発信により、周年であること、周年事業を実施するという意識づけに効果的です。

周年事業の具体的な施策例
  • 周年式典
  • 記念動画、歴史映像などの制作
  • 周年記念品の作成
  • 周年ロゴの作成
  • 周年記念サイトや周年特設ページの制作
  • 社史、周年誌、社内報特別号の作成
  • 周年広告の作成 など

3.実施フェーズ

周年イヤーは、実行フェーズに突入します。

実施すること
  • 各種施策の実行
  • 継続的な情報発信

周年イヤーを通して、各種施策を実行していきます。準備段階と同様に、その進捗や活動は丁寧かつ継続的に社内外に発信しましょう。継続的な情報発信により、興味関心を持続させることが重要です。社内ではコミュニケーション活性化に、社外へはブランド認知につながります。

4.継続展開フェーズ

周年後は、継続展開フェーズに入ります。周年事業は、周年イヤーの終了とともに終わらせないこともポイントです。継続的な施策展開により、周年事業で得られた効果を継続・最大化していきましょう。

周年を機にリブランディングした場合や理念・MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を刷新した場合は、とくに継続展開でフェーズが重要です。この場合、周年事業が最初の認知フェーズとなるため、周年後も継続して施策を展開することで、理解・共感・浸透を促していきます。

周年事業の成功事例

周年事業は、実際にどのような施策を展開し、どういった成果が得られるのでしょうか。揚羽の支援実績より、周年事業の成功事例をご紹介します。

創業の想いと感謝を未来につなぐ周年プロジェクト

2023年に創立50周年を迎えたパーソルテンプスタッフ株式会社では、この周年を機に次の100年へ歩みを進めるプロジェクトを始動。社員、派遣スタッフ、クライアント、パーソルグループ各社、同社に関わるすべてのステークホルダーに、創業時の想いや経営理念の真意を浸透・深化させることを目的としました。

実施したこと
  • 同社の歴史を知る社員や若手社員を対象にインタビューを実施
  • 「創立50周年記念ロゴ」を制作
  • イントラサイトの開設(周年を迎える1年前より)
  • 社員向けにスクリーンセーバーを制作
  • 歴代社長3名が全国21拠点を回るキャラバンの実施
  • 50周年特設サイトの制作
  • 感謝祭の実施(オフライン)

周年事業を3ヵ年に分け、1年目は過去を継承する期間に設定。継承されてきた経営理念の理解・共感を促し、従業員の誇りやエンゲージメントを高める施策を実施しました。

そして、その集大成として、オフラインイベントである感謝祭を実施。実施後のアンケートでは、参加した社員の94%が5点満点中の4点以上と回答し、非常に満足度の高いイベントとなりました。

周年を機に全社を巻き込んだパーパス策定

2023年9月に設立40周年を迎えることを機に、改めて自社の存在意義と今後も目指す方向性を明確にするため、新たなパーパス策定と企業理念の体系化、パーパスの浸透活動まで伴走した事例です。

実施したこと
  • パーパス策定:インタビュー調査、社員ワークショップ、社員アンケート調査
  • ブランド価値の整理:社員ワークショップ、社員アンケート調査
  • パーパスを表現するビジュアルの策定

本周年事業は、プロジェクトメンバーだけで完結しない「全社員を巻き込んだ臨場感のあるパーパスづくり」を重要視しました。そのため、すべてのプロセスで社員の参加を促し、意見を取り入れ、パーパスの決定も全社向けにアンケートを実施した上で決定しています。

社員の言葉からブランド価値を抽出し、それらを整理した上で社員たちがパーパスを最終決定。全社員を巻き込んで進行することで、社員が新たなパーパスを自分ごととして理解・共感しやすくなりました。

結成10周年の節目に理念を見つめ直す周年事業

LIXIL労働組合結成10周年という節目で、10周年記念事業をインナーブランディング強化の一つと捉え、1年間を通しての記念事業を行いました。その目的は、10周年の機会に理念を見つめ直し、結成当初の気持ちや活動の意味を理解し、絆を深めること。

改めて労働組合の活動理念を浸透させるとともに、これまでの感謝を伝えるための施策を展開しました。揚羽は、企画案の検討段階から運営まで支援しています。

実施したこと
  • 施策の展開・流れの設計
  • 周年ロゴの作成
  • 周年特設サイトの制作
  • 記念誌の作成
  • オンラインイベントの企画、オープニング映像の制作

周年事業全体のコンセプトを軸に、揚羽がロゴからWeb施策、オフラインイベントを一気通貫でプロデュースしました。

周年事業を成功させるポイント

あわせて、周年事業を成功させるポイントもお伝えします。

目的の明確化

目的は、周年事業の方向性や具体的な施策を検討する上でベースとなるものです。目的が明確でないと、周年事業の意義や成果が発揮されなくなる恐れがあります。

目的は、経営課題をふまえて明確化することがポイントです。経営課題が複雑な場合や目的がうまく定まらない場合は、早い段階でプロに相談できると良いでしょう。

社員を巻き込む

周年事業は、社員を巻き込んで全社的に実施することが重要です。プロジェクトメンバーなどの特定のメンバーだけが周年事業に携わり、そのほかの社員がただの傍観者・参加者となってしまわないよう注意しましょう。

施策の策定段階で社員アンケートやワークショップを実施したり、社内報やイントラで周年事業の準備の様子や進捗を報告したりと、継続的かつ積極的な接点をつくることがポイントです。

一過性に終わらせない

周年事業を一過性のものとせず、未来に繋げていく活動の第一歩とすることも大切なポイントです。そのためには「周年」を目的とせず、企業の根底にある課題解決や目的達成のための「手段」としてどう活用していくかを考える必要があります。

とくに、周年を機にリブランディングしたり、新たな中期経営計画を策定したりした場合は、それを理解・浸透させ、具体的な行動に移していかなければなりません。一過性に終わらせないためにも、目標を設定し、周年後も継続的に施策を展開していくことが大切です。

まとめ

周年事業では、周年を機にさまざまな施策を展開していきます。その目的は、理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透、リブランディングや従業員のエンゲージメント向上などさまざま。周年事業を実施することを目的とせず、経営課題を軸に方向性を決め、課題解決や目的達成のために周年事業を活用するイメージです。

そして、企業のこれまでとありたい姿を社内外に伝えることで、信頼と期待を同時に高めて変革を起こしておくことが重要です。

揚羽では、周年事業を含む、包括的なブランディング支援を行っています。課題や方向性の策定から施策の企画・制作、その後の浸透活動まで一気通貫での支援が可能です。周年事業を実施したい、周年を機にリブランディングなどを検討している企業は、ぜひお気軽にご相談ください。

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